「金の卵」といえば、イソップ物語に出てくる「メンドリと黄金の卵」が有名ですね。 貧しい農婦があるとき、黄金の卵を産むメンドリを見つけ、またたく間にお金持ちになります。 ところが日にひとつしか卵を産まないメンドリに不満を持った農婦は、浅知恵をめぐらせてこう 考えました。 「欲しいものがもっといっぱいあるっちゅうのに、黄金の卵が出てくるのを待つのは耐えられねぇ。 きっとメンドリのお腹にはたくさんの黄金が詰まっているはずじゃ。そうにちがいねぇ。そうじゃ。 自分で黄金の塊を取りだせばええ」 農婦はメンドリを捕まえると、丸々と膨らんだ腹を切り開きました。しかし、そこに黄金はなく、 肝心のメンドリも死んでしまいました。 メンドリを失った農婦は結局、以前よりも貧乏になってしまいました。 ※「黄金の卵」(国立国会図書館デジタルコレクション・ 『新訳イソップ物語』・藤浪由之 訳[他]/大古田文英堂/大正12年刊)より このお話は強欲を戒めた寓話にすぎませんが、現代はこの絵空事を絵空事のままに放ってはおきませんでした。 そうです。このお話を現実のものにしてしまったのです。 1個3億円「金の卵」産む鶏 ゲノム編集で量産可能に がんや肝炎の治療薬となる有用たんぱく質を含んだ卵を産むニワトリをゲノム編集技術によって作り出すことに、産業技術総合研究所などの研究グループが成功した。大腸菌などを使う手法はすでにあるが、今回の方法を使えばより安価に大量生産できるという。 産総研バイオメディカル研究部門の大石勲・研究グループ長らは、ニワトリのオスの胚(はい)から精子のもとになる細胞を分離培養した。これにゲノム編集技術を使い、がんや肝炎の治療薬に使われる「ヒトインターフェロンβ」を作る遺伝子を挿入し、別のオスの胚に戻して孵化(ふか)させた。 (朝日新聞DIGITAL 2018年6月5日掲出) なぜゲノム編集した鶏から産まれた卵が高価なのか。その理由は、これまで治療薬の元となる組み替えタンパク質を大量生産できなかったことにあります。 ゲノム編集により鶏卵を使って有用な組換えタンパク質を大量生産 【今後の予定】 本研究により、ニワトリを生物工場として高価な組換えタンパク質を低コストで大量生産可能なことが初めて示された。現在、ヒトインターフェロンβは10 μgあたり約2~5万円と高額である。 今回開発した技術では、卵1個に30~60 mgのヒトインターフェロンβを含んでおり、単純計算では6,000万~3億円分に相当するが、製品化には精製工程の開発が重要である。 (国立研究開発法人産業技術総合研究所 2018年6月5日掲出) 図解に登場するヒヨコやニワトリたちの表情がとてもりりしく見えるのは、筆者の気のせいとは思えません。「金の卵」効果が効いているのでしょうね。 近い将来、さまざまな特効薬が卵の形で提供される(?)日が近いかも。あまり欲張らずにその日が来ることを楽しみに待ちましょう。(水田享介) ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ ■関連リンク 産総研(国立研究開発法人産業技術総合研究所) 公式サイト https://www.aist.go.jp/ --------------------- 「できる!」ビジネスマンの雑学 ジャンル別 --------------------- 〇ニュースを読む 〇出来事 〇本・雑誌 〇IT関連 〇旅 〇食と料理 〇教育 |
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