子どもの頃、川面に浮かぶアメンボは不思議でいっぱいの生物でした。六つある足を目いっぱいに広げ、沈むことなくスイスイと水の上を移動する姿は、子どもの、いえ人の常識を越えた存在でした。 なぜアメンボだけは水に浮いていられるのか、なぜすばやく水面を移動できるのか。誰しも子供心に疑問を持ったことがあるでしょう。 それなのにアメンボは、川辺に行けばいつもそこにいるわけですから、私たちにとって身近で謎に満ちた生物と言えるでしょう。 日常風景に溶け込んでいたこのアメンボに疑問を持ち、観察し続けた長崎の女子高生達が、このたび新発見を成し遂げました。 新種アメンボ 大村湾で発見 長崎西高の生物部3人 60年ぶり快挙 和名「ナガサキアメンボ」 長崎県立長崎西高生物部の3年生3人で構成する研究グループが新種のアメンボを大村湾で発見したとして1日、カナダの国際学術誌ホームページで発表された。(中略) グループは、リーダーの朝鍋遥さん、生物部長の平野安樹子さん、桃坂瞳さんで、いずれも17歳。昨年6月、大村湾に生息する絶滅危惧種の海産アメンボ4種の調査を始めたところ、淡水に生息するナミアメンボにそっくりな個体が海面で群れているのを発見、採取。「海産アメンボ類は丸っこい紡錘形。なぜ淡水にいるはずの細長い種が海面で生息しているのか」と疑問を抱いた。 (長崎新聞 2018年5月2日掲出) ちょっとした形の違いに疑問を持ったことが、新種発見につながったのです。アメンボ専門家を含めたおとなの昆虫学者達は、どうせたいした違いはない、と高をくくっていたそうですから、専門家を出し抜く女子高生達の慧眼でした。 しかも、50回以上もの地道な調査と飼育により、これまで知られていたアメンボとは異なる種と自分達の手で証明したのです。 その証拠の積み重ねが研究者、学会を動かしました。 重要な研究成果と認めた専門家の安永智秀アメリカ自然史博物館研究協力員(54)=長崎県長崎市在住、農学博士=が責任著者となり、生徒らと連名で論文を作成。カナダ「ザ・カナディアン・エントモロジスト」誌ホームページに掲載された。安永氏は「アメンボは研究し尽くされた感があるが、粘り強い研究が60年ぶりの新種発見という大きな成果を上げた」と話している。 (長崎新聞 同上) 驚くような新発見は今も身近にあることを、十代の女子高生達が証明してくれました。 豊富な経験が時にはその目を曇らせて、未知の存在に気付けないこともあることを、この発見は教えてくれています。(水田享介) --------------------- 「できる!」ビジネスマンの雑学 ジャンル別 --------------------- 〇ニュースを読む 〇出来事 〇本・雑誌 〇IT関連 〇旅 〇食と料理 〇教育 |
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