マハティール氏といえば、1981年から2003年までの22年間、マレーシアの首相を務めた歴史に残る大政治家です。就任当時、「ルックイースト」をスローガンに、日本をお手本とする勤勉な労働を国民に訴え、その見事な手腕でマレーシアを経済的に自立させました。 そのマハティール氏も現在は92歳。悠々自適な老後を送っているかと思いきや、なんとつい先日、2018年5月9日に行われた総選挙で、再び首相の座に返り咲きました。 おおよそ15年ぶりの劇的な復活。しかも60年以上続いた与党連合・国民戦線を破るという、マレーシアにとって初の政権交代となりました。 マレーシア 92歳マハティール氏再び首相へ 初政権交代 選挙委員会などによると、投票率は約76%。開票結果では野党連合が解散前の72議席から41議席増やし、国民戦線は130議席から79議席に減らした。 元々与党を率いてきたマハティール氏にとってナジブ首相は愛弟子に当たる。しかし、15年にナジブ氏に政府系ファンドから巨額を選挙資金に流用した疑惑が持ち上がった後、マハティール氏はナジブ氏批判を強めて与党を離党した。マハティール氏を選挙の顔にした野党は、国民に広がる汚職に対する嫌気と物価上昇への不満を追い風に、支持を広げた。【クアラルンプール武内彩】 (毎日新聞・国際 2018年5月10日掲出) ではなぜ、マハティール氏は老体にむち打ってまで出馬したのでしょうか。そこには複雑な事情がありました。 まず、マハティール氏が育てた後継者が、政府系ファンドから不正に資金を引き出した疑惑があります。その額たるや数十億ドル。日本円にすると数千億円とも言われています。こうした政治汚職に加えて物価は上がり続け、庶民の生活は苦しくなる一方。 さらに、経済立て直しのために導入した物品サービス税への不満は大きく、中国頼りのインフラプロジェクトにも危機感が広がっていました。 政治にも経済にも、新しい舵取りが必要だったのです。では超高齢者のマハティール氏にその役が務まるのでしょうか。 筆者はマハティール氏しかいないし、その役は務まると考えます。 あまり知られていませんが、航空業界にLCC、いわゆる格安航空の旋風を巻き起こした張本人がマハティール氏なのです。 マハティール氏は2001年、航空会社の起業を目指していたインド系青年に、マレーシア政府所有の航空会社をわずか1リンギット(約30円)で売り渡しました。 航空会社を30円で譲渡するとは、すわ、汚職事件かと思われますが、この航空会社には途方もないおまけが付いていました。なんと、1100万USドル(十数億円)もの負債を抱えたおんぼろ会社でした。この会社を30円で買うということは、同時に巨額の負債を背負わされたようなものです。 そして誕生したのが、エアアジア。航空会社を負債と一緒に引き取った青年がトニー・フェルナンデス氏、現在のエアアジアグループ CEOです。 優秀だが抜本的な解決能力のない官僚より、熱意のある若者に思い切って航空会社をまかせてしまおう。こうした決断力が、マハティール氏が持つ優れた政治センスです。彼の決断がなければ、いまもLCCは誕生していなかったでしょう。 また、筆者はしばしばマレーシアを訪れていますが、整備された高速道路にはいつも感心します。しかも、路面の状態から、白線の引き方、ガードレールのデザインまで、日本の高速道路といっしょなのです。 おそらく、日本の技術指導で作られたのでしょうが、熱帯地域にもかかわらず行き届いたメンテナンスのため、他のアジア諸国のようにバスが激しく揺れることはありません。 「ルックイースト」 マハティール氏がふたたびこの言葉を発したとき、今の日本はそれに応えられるのでしょうか。 それだけが筆者の心配する所です。(水田享介) ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ ■関連リンク Air Asia(エアアジア) https://www.airasia.com/jp/ja/home.page --------------------- 「できる!」ビジネスマンの雑学 ジャンル別 --------------------- 〇ニュースを読む 〇出来事 〇本・雑誌 〇IT関連 〇旅 〇食と料理 〇教育 |
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