世にも不思議な裁判が、ようやく決着を見ました。 カメラマンのデービット・スレーター氏がジャングルにカメラを仕掛け、そこに集まってきたサルたちが「自撮り」した写真は、その好奇心旺盛でユニークな表情により、野生動物のセルフポートレート写真、いわゆるセルフィー(selfie:※1)として一躍有名になりました。 ところがこの写真の著作権をめぐり、とある団体から「著作権はサルにある」と裁判に訴えられてしまったのです。 サルの「自撮り」、誰に著作権? 収益寄付で訴訟和解 サルが人のカメラで「自撮り」した場合、サルに著作権は認められるのか。動物愛護団体がカメラの持ち主である写真家を訴えた訴訟が11日、和解した。写真家が将来、自撮り写真から得られる収益の25%をサルの保護のために寄付することに合意したという。 英メディアなどによると、インドネシア中部スラウェシ島で2011年、英国の写真家デービッド・スレーター氏が、三脚を立てたカメラに、手元でシャッターを押せるレリーズを付けてサルの近くに設置した。これを使って「ナルト」という名のサルが「自撮り」に成功。サルが歯をむき出しにしてニヤリと笑う写真は有名になった。 (朝日新聞デジタル・ロンドン=下司佳代子 2017年9月13日) この裁判を起こしたのは、米国・動物愛護団体の「PETA」です。PETAと言えば、過去にこのコラムでもご紹介しています。 [040]動物愛護の名を借りた募金活動?ゾウの曲芸禁止広がる (2015年04月23日) この団体がどういう考えで提訴したのか、筆者は知りません。そのため裁判の結果についてだけコメントします。 「乳、バター、チーズ、肉、卵などでお世話になっている牛、ヤギ、羊、ブタ、鶏など家畜たちに、あなたたちはどれだけの製造権料を支払ってきたのですか」 と筆者は聞きたくなりました。 野生のサルたちが「自撮り」した写真は、確かに世界中で話題となりました。そして、偶然にも自分の手で被写体になるだけで、たとえ野生のサルでも、その利益は還元されることもわかりました。 一方で、家畜たちはその生命を犠牲にして、おいしい食材を提供しています。ところがその恩恵を家畜たちが受けたと聞いたことはありません。その利益のすべては生産者や料理人のものでした。 まさか家畜だからといって、彼らにエサをあげるだけで報酬を支払わないと言う理屈は、この裁判を起こした後は通らないでしょう。 今回の珍妙な裁判をきっかけに、家畜と野生動物の境界線について、もっと議論を深めていただけるといいですね。(水) ------------------ ※1=selfie(セルフィー) 自分の姿を自分で撮影すること。セルフポートレートの略。日本語では「自撮り」ともいう。主に食べ物やお気に入りの商品・服・場所などと一緒に自分を写りこませる行為を指すが、SNSに投稿したこうした類の写真もセルフィーという。 --------------------- 「できる!」ビジネスマンの雑学 ジャンル別 --------------------- 〇ニュースを読む 〇出来事 〇本・雑誌 〇IT関連 〇旅 〇食と料理 〇教育 |
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