「働く男子(ひと)のルール」
この本の執筆は、僕にとって
本当にチャレンジだった。
明日香出版社編集者である藤田知子さんとの初顔合わせは昨年の12月22日だったと記憶している。
彼女は僕の前著を読み、
僕が伝えていることに共感を覚え、
執筆依頼の連絡をくれた。
僕は、「コーチング」というコミュニケーションの分野の専門家だ。
すでにこの分野で20年ほどの実績がある。
その僕に、しかも僕の本を読んで僕に関心をもった藤田さんが依頼に際し持ちだしてきた条件は、
『「コーチング」「コミュニケーション」という長いカタカナは使わないでください』だった。
正直、度肝を抜かれるという言葉がしっくりくるほど驚いた。
その分野の専門家の武器を奪いかねないその条件。
いろいろ妥協案を持ちだすも、藤田さんは一歩も引く気配がない。
これは、引き受けるしかないと思った。
なぜなら、僕は、その人の意図にかなった目標や目的に向かって結果を出すために人をサポートするプロであり、人にそうある自分である以上、自身も常にチャレンジすることを厭わないところに生きている自負が少なからずあるからだ。
そして、引き受けたはいいものの、そこから先は、本当に、チャレンジングな日々だった…。
プロのビジネスコーチ(コーチングとは会話で人や組織の行動や結果達成をサポートする仕事)として活動している中で、十人十色以上にいかに人一人一人が違っているか、そして、同じ人の中でも一瞬一瞬変化していて、今見つけた答えがもう次には役立たないかが身に染みている。
だからこそコーチングでは、目の前の相手との「今」の会話で都度何をすべきかを一緒に探っていく。
ところが、今回は「ルール」なのだから、働く男子の誰にも当てはまる原則を示さなければならない。
といっても、ありきたりのノウハウや教訓では使えないし、「こうすべき」というテクニックでは応用が効かない。
冒頭の条件と共に編集からは、寄り添ってサポートになるようなものをとリクエストされていたので、「俺のやり方についてこい!」と言うのも違う。
しかもルールというのは、時代や状況によって常に変化していくものだ。
そんな中で、シンプルな「ルール」でありながら、使ってみると深いもの、それを100個並べるというのはただ事ではなかった。
この僕のチャレンジがどんな結果になったかは、ぜひあなた自身で確かめてほしい。
本書では、「今のあなたのままで、よりあなたの本質に近づく、自然に生き生きと軽やかに進んでいくルール」を選んで紹介することを心がけた。
さあ、自分探しなどではなく、自分活かしを始めよう。
岸 英光