僕は書くために生まれてきた。自分の失敗体験を人々へ伝えるために生まれてきた。そしてそこから見つけ出した幸せに生きるための知恵を伝える。それが僕の天命だ。
僕の生い立ちと仕事人生を聞いたある人は、僕のことをファースト・ペンギン、と呼んだ。南極の氷を覆いつくす無数のペンギンたち。彼らは氷の縁から海へ飛び込もうかどうか逡巡している。なぜならば目の前の海にはおいしい餌となる魚だけでなく、自分の命を狙うシャチや鮫などがうようよとしているかもしれないからだ。
右往左往するペンギンたち。しかしある時に勇気ある一匹のペンギンが意を決してドボン!と海に飛び込む。それがファースト・ペンギンだ。先行者利益として思う存分魚を喰らうことができるかもしれない。しかし、逆にシャチの餌になってしまうかもしれない。他のペンギンは彼のことをじっと見守る。1秒、2秒…。どうやら大丈夫そうだぞ。それ!飛び込め!ドボン!ドボン!ドボン!これがファーストペンギンの役割だ。
しかし、僕の場合は逆のシナリオが多い。勇気を振り絞って飛び込む、というよりは、居ても立ってもいられなくて、見境なく無謀に飛び込んでしまう。そしてシャチに噛みつかれ、傷だらけになりながらほうほうの体で氷の上に戻ってくる。それを見た他のペンギンたちがこう気付く。「そうか、小倉さんみたいにやると失敗するんだな」と。なんともカッコ悪いファースト・ペンギンである。
でも、それでいい。カッコイイ成功者のアドバイスは僕にはできない。だが傷だらけの失敗体験ならば話してあげることはできる。その方がリアリティーがあるじゃないか。等身大じゃないか。
無謀な性格の僕はこれからもどんどん失敗を続けるだろう。そして傷だらけになりながらこう言うだろう。「ほらね、僕みたいにやると失敗するぜ。だから君は別なやり方をした方がいい。血だらけになるのは僕一人で十分だからね」と。
そう自分に言い訳をしながら、今日も僕は無謀に海へ飛び込み続ける。
では、皆さんお先に行ってきます!また後で! せーの、ドボン!!
株式会社フェイスホールディングス 代表取締役 小倉 広