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2017年09月14日
目から鱗!気分を変えて英語に向き合う処方箋! 第2回(連載10回)

 英語センス判定クイズ:何語でも想像力次第で誰でも分る?

 私は大学で自分のゼミへの加入者を選別する時、しばしば英語のクイズを出して、その人の英語のセンス、適性をチェックします。TOEICなどのスコアで示される今の英語力がどのくらいかは別として(つまり有体に言えば、その段階でTOEICの点数が低くても)、将来性を考えた場合に、英語能力の伸びはセンス次第、それに日本語力、想像力の勝負だと確信していましたから。
 まずは一つの例を示しましょう。世界のどこかの街を歩いていて、建物に次のような看板を見ました。

「Banco Nacional Ultramarinoって何?
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Banco Nacional Ultramarino
分かるはずが無い??

 英語でもない(なさそうな)横文字、分るはずがないとあなたは初めから諦めますか?でも諦めたらそれっきりです。何とか手がかりを探してみましょう。
 ここで想像力の出番です。英語とはスペルが違いますが、「バンコ」という発音に一番近い英単語は誰でも知っている「バンク」ですね。「ナショナル」は、これもスペルが英語とは微妙に違いますが、でも同じものだろうと察しはつきます。「民族」とか「国立」とかの意味です。ナショナル・ミュージアムは国立博物館ですね。となるとそこまでは「国立銀行」という意味だろうと察しをつけます。
 最後の難問は「ウルトラマリノ」です。しかしこの言葉、容易に二つに分離できます。「ウルトラ」と「マリノ」。ウルトラと言う言葉、これは日本語になっていて、「超」とかのイメージは誰でも浮かぶでしょう。でも「超」以外のイメージもあります。例として「紫外線」という英語を考えましょう。紫外線カットはUVカットです。
 紫外線は文字通り、Ultra(外) Violet (紫) Rays(線)と言うのです。つまり、この場合、「Ultra」は「外」という意味を持つわけです。「marino」は、日本語でも、マリンスポーツ、葉山マリーナ、横浜マリノス等々、似通った言葉が脳裏に浮かびます。どれも海に関係しています。つまり Ultra(外)marino(海) ⇒「外・海」⇒「海外」ということなのです。そう、正解は「国立海外銀行」(ポルトガル語)というわけです。英語でなくてもじっと想像すれば何となく分かると言った意味がお分かりでしょうか?

 ついでに加えると、今、ロンドンに行く人で英国航空(British Airways: 略してBA)に乗る人も多いでしょう。古い人ならご存じでしょうけど、その昔、BAはBOACと呼ばれていました。British Overseas Airways Corporationの略です。
 英国海外航空と日本語では言っていました。この「Overseas」と上記の「ultramarino」は、同じものだと分かります。どちらも「海を超える」という意味ですから。

 もう一つ、想像力テストです。次の一塊の単語、全体で何という意味なのでしょう?

The morning after the night before.

 文字通り訳してみれば、「前の夜の次の朝」ということで、何の変哲もない、意味不明の表現に思えますが、何となく勘でお分かりでしょうか?もっと気軽にMorning afterだけでも使えます。ここも想像力の出番です。実は何のことはない、「二日酔い」ということです。要するに「しこたま飲んだ晩の次の朝」というわけです。こういう表現を見ていると、英語って自由だなと思えてきませんか。
 楽しくもあります。単語力ではなく、想像力と言った理由がお分かりでしょう。
 
ついでに二日酔いと言えば、hangoverという、そのものずばりの単語もありますから、是非覚えておいて使ってみましょう。

 さて最後にもう一つ、ちょっと難しい、英語センスチェックの事例を。
 例えばあなたがアフリカの某国の経済状況を調べようと、図書なりネットなりで、GDPやらGDP per capita(一人当たりの国民所得)、人口動態、乳幼児死亡率、平均寿命、貿易収支等々、いろんな国全体の指標や数値を調べていたとします。そのカントリーレポートの最後に注釈が書いてありました。
 下記の通りです。

Figures may vary depending on sources.

 さて、これはいったい何を意味するのでしょう。これは上級編で、かなり難しいです。

 Figuresは、もちろんフィギュアで、スケートや玩具のフィギュアが頭に浮かぶかも知れませんが、こうした経済関係に関して使われると、それは普通、「数値」という意味で使われます。ナンバー(数)と近い意味です。Varyはmayの後ろにありますから、動詞として使われています。スペルから判断して、バリエーションとか、バラエティという似通った単語が想起されます。それでおおよその察しはつきましたか?さてDepending on ~は、~次第という意味です。「状況次第だよ」とか「成行き次第だよ」と言うときに「It depends!」とよく言います。
 最後のsourceは、これもソースとして日本語にほぼ定着している言葉ですね。「その情報のソースは確かか?」などと使われ、出所とか源ということで、情報源とかの意味もあります。A power sourceで電源、informed sourcesで消息筋、source bookで、歴史などの原典、史料、source languageで、翻訳される原典の言語と言う意味です。これもフランス語起源の単語です。
 なお料理に使うソースはフランス語(起源)の「Sauce」で、まったく別物ですから、ご用心。

 以上のように考えてくると、もうすでに意味が十分取れていると思います。
 「本報告で使用した数値は、情報源によっては変化・変動する(違った数値になる)ことがあります」という注釈ですね。勘の良い人なら、国によっては、経済データが不完全だったり、あえて不都合なデータが公表されなかったりと、いろんな不規則性があるし、政府の公式統計と国連やNPO等、外部の統計との間に乖離があることもしばしばなので、こうした注釈が必要なことにお気づきでしょう。

 最後に付け加えるなら、Figureという単語は、人物という意味でも用いられます。Mr. Ozawa is one of the most controversial figures in Japanese politics.(小沢氏は日本の政界では、最も毀誉褒貶(きよほうへん)の激しい(議論の分かれる)政治家の一人だ)という具合に。 (続く)



タイトル 『目から鱗! 気分を変えて英語に向き合う処方箋!』     

    ~ 理想や虚像に幻惑されないで、足元から着実に ~ 

千葉大学教授 小川秀樹 (国際社会論・グローバル人材論)

1956年生まれ。79年、早稲田大学政経学部卒業、ベルギー政府給費でルーヴァン大学留学。国連ESCAP(バンコク)、在イスラエル日本大使館勤務等を経て、横浜国大大学院博士課程修了。岡山大学教授等を経て、2016年より現職。

 著書に『ベトナムのことが3時間でわかる本』(明日香出版社)、『あなたも国際貢献の主役になれる』(日経新聞社)、『ベルギーを知るための52章』(明石書店)、『学術研究者になるには 人文社会系』(ぺりかん社)、『国際学入門マテリアルズ』(岡山大出版会)等、多数。

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