普通の本屋を続けるために
2023年08月30日
第9回・変化の話

前回は、取組みを続ける仕組みの紹介をさせていただきました。
今回は広めた取組みの中で起こった変化についてのお話をします。


【大きな変化】

「生産性を上げていこう」と作業標準を決めてマニュアルを書き起こして研修を始めた当初、周りは懐疑的な立場の社員やスタッフさんだらけだったと記憶しております。
今まで「自社内で研修をプログラムして執り行っていく」なんてしていなかった環境の中で、そのような見方をされてもしかたのない状況だったと思います。

しかし、数年かけてプロジェクト方式での改善活動を経験してきた今では、様々なプロジェクトで研修が行われています。
本の生産性向上の取組みはオンラインでの研修をするにまで至っています。
司会進行する側だけでなく、受講する側も変化しているのではないかと感じています。
また、私も本の生産性向上プロジェクトを離れれば「受講する側の社員」の立場になります。

研修の教科書となるマニュアルは、改訂を重ねて常に変化しています。
今期お店のスタッフリーダーさんに参加してもらっている本のプロジェクトが示すように、改訂の要望やそのための議論は現場のスタッフさんまで巻き込んだものになってきていると感じています。

起こっている問題が解消されて、新たなルールが設定される。
設定されたルールが研修を通じて浸透していく。
いたって普通の流れであるようですが、組織において大切なことだと思って仕事をしています。


【現場での変化】

ここからは、実際に店舗で起こった変化をお伝えしていきます。
マニュアルの作成が大きな変化を促す要因となったのは間違いありません。
「基準があれば困らない、迷わない、余計な気を使わない。基準があって初めて良し悪しが判断でき、改善に参加できる。」
これが決まり文句です。

比較対象があると、自分のやり方がどうであるかがわかりやすくなります。
ズバリ「私のやり方のほうがいい!」となれば検証してマニュアル改訂です。
研修に参加したスタッフさんからは「他のお店の品出しの様子を初めて見た!」という声をよく聞きます。
「他のお店がどうやっているか気になる」というのは、色々なお店の方が共通して思っている事です。そこで、マニュアルを伝えるときには「このマニュアルに記載しているものは、皆さんと同じように、どこかのお店の誰かがやっているやり方です」と言っています。

ルールがないが故に起こっている問題は、やっぱり誰にとっても困ることだったのかな、と感じています。「決めごとばかりでは息苦しい」から始まって「ルールがなければダメだ」への変化が起こっているのではないでしょうか。

そして今期も、生産性向上の観点で
・ブックトラックの仕様と台数の標準化
・ブックトラックの付属装備標準化
・ハンディーターミナルの待ち時間を発生させないための台数標準化
・ハンディーターミナル装備のたすき掛け紐標準化
・定期購読管理作業の標準化
など、現場の最先端の改善を実施しています。

毎日やっている作業への見方をちょっと変えることで、新たな改善課題をもらっています。


【外に出てみての変化】

機会をいただいて、他の本屋さんにお邪魔することがあります。
そこで何よりもうれしいのは「人の変化」です。

当時一緒に取り組んだ最年少店長が一番店の店長になった話を聞きました。うれしい!
この取組みを主体者意識を持って取り組んでくれたスタッフさんが、社員に登用されました。うれしい!

「捻出した時間を教育に力を入れたい」と言ってくれていた社員さんが、教える立場になりました。うれしい!

レジ専門のスタッフさんが品出しの機会を得て、大変なみんなのフォローができるようになっていました。うれしい!

「マニュアルを作るのが好き」と言っていた社員さんが、会社全体のマニュアルを任されるようになりました。うれしい!

スタッフさんが「店長とのコミュニケーションが増えました」と言ってくれました。うれしい!

あるリーダースタッフさんが「レイバーチャートで指示していた作業が出来るようになった」と言ってくれました。うれしい!

あるスタッフさんが「目標設定で皆の作業への動きが変わった」と言ってくれました。うれしい!

「言われるまで、これが作業負荷だと思わなかった。確かにこれは屈伸運動だった」と言ってくれたスタッフさんがいました。うれしい!

「売場の装飾が出来るようになった」と言ってくれるスタッフさんがいました。うれしい!

今までのやり方に頑なだったスタッフさんが「もう戻れない」と言ってくれました。うれしい!

年次の若い社員さんが、マニュアルを用いて年長の社員さんに教えていました。うれしい!

スタッフさんがマニュアルに即して他のお店のスタッフさんに教えていました。うれしい!

お互いの改善活動を報告しあえている環境ができました。うれしい!

「私は効率よくやっているから見に来てください」といってくれるスタッフさんがいました。うれしい!

「黒船」って言われました。うれしい!

変わることを受入れ取り組んでくれたことを称賛してくださる経営陣の方々にも、うれしい!

称賛されるお店の社員さん、スタッフさんをはじめとした皆さんにも、うれしい!

「変わることは喜びを伴う」と強く思っています。
そして、本屋で働く皆さんは変化にとても上手に対応できます。
これは、新しい本で日々売場に変化を加えているからだと思っています。

コメントを書く
お名前
URL
コメント
書籍購入はこちら 語学音声アプリ 公開中 閉じる