つい最近、和歌山県でもったいないから生まれたある特産品が話題になっていることをご存じでしょうか。
この特産品はみかん農家の青年のちょっとした疑問と常識にとらわれない発想力から誕生しました。
"青いみかん"を新たな特産品に
みかんを大きくするために、半分以上の実を取り除きます。摘み取られた青いみかんはこれまで廃棄されてきました。
農家、橋爪裕介さんです。手間暇かけた実を廃棄してしまうことをもったいない...。
(NHK和歌山WEB特集 2024年12月27日)
みかんやリンゴ、梨などの果樹は味の良い実を作るためすずなりに実を付けさせず、つぼみや花の段階から間引く「摘蕾・摘花」、実を付け始めたら間引く「摘果」を行っています。これは果実の品質を向上させ収穫量を安定させるための重要な作業として長年にわたり慣習化しています。
いわゆる先人の知恵です。
摘果した未成熟の果実は商品価値のないものとして捨てられていました。捨てることがみかん農家の常識だったのです。ところが先出の橋爪さんは捨てることにも捨てるため行う重労働にもに疑問を持ちます。
若者の橋爪さんにとって夏場の摘果作業はとても辛いうえ、採った実を捨てるだけの作業は報われた気がしなかったのです。そして、未成熟の青いみかんはなんともいえずいい香りを放っていたことに気がつきます。
つわりの重かった奥様に試しに摘果みかんを使ったソーダ水を飲ませたところ、コレが大好評。今まで捨てるしかなかった未成熟みかんの販売を思いつきました。
廃棄するものを、
新しいカタチに変える
通常、みかんは年一度の収穫で、商品価値を落とさないために、慎重に作業しなければならない。その点、摘果作業には熟練した技術は不要で、アルバイトでも可能。さらに10月の台風シーズンの前までに3回程度の収穫が可能...。
(「和 nagomi-vol.51」 和歌山県・広報課)
常識にとらわれない若者の発想が新しい商品を生み出しました。
とたろで、熟してもいない濃い緑色のみかんなんて、口にして大丈夫かなと思う方も多いことでしょう。
ではレモンはどうでしょうか。熟す前の緑色のレモンも完熟した黄色いレモンも分け隔てなく売られています。レモンの色が違うことはあまり問題視されていません。
それはレモンは果肉を食べるわけではなく、果汁や皮を香り付けや薬味として使っているからです。
筆者が調べてみると、みかんもレモンも同じ「柑橘類」の仲間3属10類に別れています。しろうと考えですが、食べ方や用途によって別けられている気がします。
柑橘系の種類は?~わかりやすい分類と一覧~
(味覚ステーション/日本味覚協会 2020年08月08日)
この区分が用途によるものとすると、みかんとは未成熟の青いみかんの時代は「香酸かんきつ類」で、完熟して果実を食べられる時期は「ミカン類」に移行するふたつの類を持つ柑橘類といえるでしょう。
この青いみかんは、薬味や飲み物としてだけでなく、鮨酢、紙ナプキン、ハンドソープと用途は広がっています。
居酒屋のチューハイのメニューに加わる日も近いかも知れませんね。
ところで、記事にある「青いみかん」は青色なの?写真で見ると「緑のみかん」ではないの。それは言いっこなしです。(水田享介)