日本語で香菜(こうさい)、タイ語ではパクチー。またの名をシャンツァイ(香菜:中国語読み)、コリアンダー(英語)。
多彩な呼び名を持つパクチーですが、独特の匂いが苦手という方も多いでしょう。日本では匂いを薄くした品種まで開発するくらいです。
「コリアンダー」? 「パクチー」?
いろいろな呼び名があるこのハーブについて、ウェブ上で調査をおこなってみたところ、「パクチー」がいちばん広く知られていることがはっきりしました。
(NHK放送文化研究所 2017年7月1日)
パクチーの匂いを表現するのに「カメムシの臭い」とよく言われます。2024年は全国的にカメムシが大発生しました。昨年、このニオイに閉口させられた方もいることでしょう。
ところでカメムシのニオイをちゃんと嗅いだ人はどれ位いるでしょうか。
カメムシが臭いのは常識だから、いまさら嗅ぐ必要はないと言う人が大部分かもしれません。
ところが実はいるのです、しっかりと匂いを嗅いで分析している中学生達が。
「嫌われ者をどうにかできないか」カメムシを芳香剤に、
中学生が研究「おいしそうな匂い」「クッキー」
日本に1300種類以上いるというカメムシ。実は良い香りを放つ種類もいることが分かり、臭いを抽出することに...。
近くに研究所のある大手殺虫剤メーカーが協力し、生徒らは学校近くの林で100匹以上のカメムシを捕獲...。
(YTV NEWS NNN 2025年1月21日)
カメムシの中にはいい香りを出す種類もいるらしい。たったこれだけの情報で兵庫県の中学生達はその良い香りを探し求めて2年間も研究を続けました。
その結果、ニオイの元となる成分を抽出することに成功します。
さらに話は広がります。なんと学校の近くにあった殺虫剤メーカーの研究所が協力を申し出ました。
将来はカメムシのいい香りで作った芳香剤ができるかも知れません。
この話にはいくつものすぐれた教訓があります。
1.カメムシはくさいという先入観にとらわれず中学生達が研究を始めたこと
2.指導する教師が子どもの研究だからと軽く見ないで研究を続けさせたこと
3.カメムシから香り成分を抽出させるまで技術力を高めたこと
4.殺虫剤メーカーの研究所が誠意を持って対応したこと
もしおとなが指導してやるという態度では中学生の研究をまともに取り合わず、結果にはつながらなかったでしょう。
また、カメムシが臭いのは常識だから、時間の無駄だから止めなさいという大人の価値観を押しつけなかったこともよかった点です。大人は時間の無駄遣いをとても嫌い、常に効率化を求めがちです。
カメムシ研究が一歩先に進めたことは、この学校の学習環境がとてもすばらしいことの表れと言えるでしょう。
大人だけで運営する団体や企業でも、過去の慣習や常識に縛られて新しい発想が生まれないことがよくあります。
中学生達ができることがなぜ大人には難しいのか。子どもなのによく頑張ったねで終わらせず、大人たちこそアイデアや発想を常にリフレッシュすることが求められています。(水田享介)