「黒いダイヤ」といえば、かつては石炭の別名でした。ところが石炭は燃やすとばいじんや有害物質を吐き出すことからすっかり嫌われ者となり、いまは「黒トリュフ」だったり「クロマグロ」や「ナマコ」を指すそうです。
では「白いダイヤ」といえば何でしょうか。
筆者は「小麦粉」しか思いつきませんでした。これ以外にも「天然塩」、「天然シラスウナギ」、「白トリュフ」があるそうです。食品関係が多いですね。
今回取り上げる白いダイヤは食品ではありません。
それは・・・理科の授業で暗記した「水兵リーベ、ぼくの船(スイ・ヘー・リー・ベ)」に登場する元素記号のリー(Li)こと。リチウムです。
白いダイヤ 乱高下の背景は【経済コラム】
"白いダイヤ"とも言われるリチウム価格に異変です。
2022年に過去最高値まで急上昇したかと思ったら、去年からは一転して急落。ピーク時のおよそ8分の1まで下落しました。
世界中で奪い合いも起きたこの希少資源をめぐって何が起きているのか・・・。
(NHK NEWSWEB 2024年12月8日)
リチウムはリチウムイオン電池と言うようにバッテリーには欠かせない材料であり、採掘できる場所も量も限られているレアメタルです。
その取り引き価格は電気自動車(いわゆるEV)やスマホ電池の需要に左右されて乱高下しているそうです。
どのくらいの価格変動かというと、2020年のリチウム1キロあたり7USDが、2022年には69~81USD(炭酸リチウム、水酸化リチウム)と10倍も跳ね上がりました。
ところが2024年になると一転、10USDにまで下落しました。
ここ数年で8~10倍の価格差が生まれています。
(※価格は上記ニュース記事による)
その主因はEV需要にあるといいます。
世界的にEVの時代を予感させる出来事が相次ぎました。紛争や戦争を要因とする天然ガスや石油価格が高騰しました。これを機に各国はエネルギー源を電気にシフトし始め、交通のEV化を目指して補助金制度を導入。EVのシェアは爆発的に伸びる・・・かと思われました。
しかし、補助金制度が終了すると同時にEV人気は急速に落ち込み、結局はEVが次世代カーの主役を獲得することはありませんでした。
この過剰なまでのクリーンエネルギーシフトにより、天然ガスへの切り替え、太陽光発電、風力発電、地熱発電などの技術開発を急ぐなど、各国はさまざまな政策を打ち出しました。
19世紀の産業革命時の石炭、それに続く20世紀の石油でもわかるように、エネルギーを支配した国家が覇権を唱えた歴史があります。過去のエネルギー革命に乗り遅れた国はこの失敗を繰り返したくないのか、21世紀の主力となる(と思われる)エネルギー開発に異常なまでに前のめりです。
ただいずれの技術も石油から置き換えられるほどの優位性はなく、また新エネルギーのいずれもが「作られたクリーン神話」にすぎないことも暴かれつつあります。
天然ガスは期待したほどクリーンでなかった、研究
カーボンニュートラルへの橋渡し? しかし過大評価だったかもしれない
(ナショナル ジオグラフィック 2020年02月21日)
リチウムについても、採掘現場では徹底した自然破壊、水資源の汚染、住民の強制立ち退きなど、数え切れないほどの不正と環境破壊をもたらしています。
アメリカのシェールガス開発に至っては、地下水汚染、自然破壊、水資源の浪費、大気汚染といくつもの問題があるにもかかわらず、米マスコミも他国もいっさい問題提起していません。
また「クリーンエネルギーは正義」、「化石燃料は環境破壊」と訴えてマスコミを賑わす自然活動家たちは自然保護は口実に過ぎず、その過激な言動で資金提供を受けるエコテロリストに過ぎません。
現在は、次世代エネルギーの利権をどの国が仕切るのか。OPECのようなエネルギー価格の支配権はどの国、どのグループが握るのか。その綱引きをわたし達は見せられているのが現状です。
21世紀の主役となるエネルギーは何か。その色は何色なのか?その行方も色すら見えず、世界はいま燃え盛る政治劇で混沌とした煙の中にいます。(水田享介)