昨今の小学生たちの活躍はめざましく、違法植物のケシや新種の昆虫を見つけたり、学芸員も見落としていたニホンオオカミ標本を再発見するなど、子どもといえど研究者レベルの観察力を備えていることは自明の理といえます。
[891]小学生が再発見したニホンオオカミ、カハク(国立科学博物館)で展示中
小学4年生の小森さんは、実物は見たことはなくとも図鑑などでニホンオオカミの特徴を事細かに諳(そら)んじており、標本を見た瞬間にオオカミ「レーダー」が反応したのでしょう。
生き物を分類する上で、見た目(形態的特徴)の観察で行うことは分類学の基本らしく、とても重要なこと...。
(当コラム 2024年05月31日掲載)
https://www.asuka-g.co.jp/column/2405/012594.html
実は、小学生たちは大人たちも観察しています。大人の何気ないルーズな違反行為も調査し統計を取り、分析しています。
先日、小学生が一時停止しないクルマの調査を行い、その結果がメディアで話題となりました。
岐阜県の小学生の男の子が今年(2024年)7月に12日間かけて、朝から夜まで30分おきに計って、止まってくれる運転手と止まらない運転手の傾向を導き出しました。
その結果、どんなドライバーが一時停止するか。そして停止しないドライバーはどんな人が多いのか、明らかにしました。
「いかつい兄ちゃんは止まってくれる。止まってくれないのは...」
小学6年生が横断歩道の"車の停止率"を調査
(中京テレビNEWS NNN 2024年10月26日)
一時停止しなかったクルマの総数は計638台。これに一時停止違反の反則金9000円をかけると、574万2000円にもなりました。
実に鋭い指摘です。もし小学生の彼が警察官だったなら、たった12日間で600万円近い違反切符を切ったことになり、警察署長から表彰されたに違いありません。
各務原市の小学生の女の子(小川さん)も、昨年12月から今年6月までの半年間、同様の調査をしました。
小学6年生の自由研究で警察が動いた
横断歩道前にカラー舗装 止まらない車を「雨の日も雪の日も数えていた」
(小川さん)「雨の日も雪の日も数えていた。傘とか持ちながらで数えるのが大変だった」
(CBCテレビ 2024年11月12日)
この調査結果を各務原警察署に報告したところ、さっそく警察署が動きました。ドライバーに横断歩道をはっきりと認識させるため、横断歩道手前の路面を赤く塗って対策したのです。
小学生たちの調査が示すように、一時停止を怠るドライバーはいまだに多く、子どもたちは改善して欲しいと願っています。
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この問題は当コラムでも何度か紹介しています。
[333]横断歩道もソコノケそこのけ、クルマが通る
JAFがこの夏に信号のない横断歩道で行った調査によると、約1万台のクルマのうち、横断歩道を渡ろうとする人に道を譲ったのはわずか757台・・・歩行者優先を守ったドライバーはたったの7%・・・。
(当コラム 2016年12月21日掲載)
https://www.asuka-g.co.jp/column/1612/007990.html
[655]横断歩道で一時停止を嫌がる日本のドライバー
日本ではほとんどのドライバーが、「横断歩道に人がいても一時停止をしない」という問題があります。
このことは筆者も日常的に体験している問題で、先日は信号のある横断歩道でしたが、青信号を渡る歩行者がクルマに轢かれそうになる場面を目撃しました。
(当コラム 2019年03月06日)
https://www.asuka-g.co.jp/column/1903/010882.html
筆者の住まいの近くには、信号機のない横断歩道が数カ所あり、横断しようと待つのですが、幅の広い直線道路はかっ飛ばすのにちょうど良いらしく、歩行者が立っていてもわざわざ停止するクルマはありませんでした。
すぐそばには小学校が2校もあるのですが、完全に無視されていました。
数年前までは、約9割ものドライバーが一時停止を怠っていたと統計が示しています。筆者の実感もその通りでした。
ところが、コロナ禍のあと、一時停止率は格段に上がったように思います。それと同時にこの直線道路で毎年のように起きていた交通事故も見かけなくなりました。
日本全国規模でみたときに、現状はどうなっているでしょうか。
「半数がまだ止まらない」怒りの警告!
いまだに「横断歩道で一時停止しない都道府県」はどこ?
最新ランキング発表! JAFが公開
法律で定められた「横断歩道の一旦停止」
JAF(日本自動車連盟)は2024年11月8日、歩行者と自動車についての全国調査の結果を発表。
そのなかで「信号機のない横断歩道」で歩行者が渡ろうとしている時、クルマがきちんと一時停止する割合は全体の「53.0%」...。
(くるまのニュース・編集部 2024年11月10日)
一時停止率の低さでワースト3の都道府県(くるまのニュース・編集部作成)は以下の通りです。
1,富山県 31.6%
2.北海道 34.1%
3.福井県 34.7%
その一方で、一時停止率の高い県(長野、石川)は80%を越えています。数年前に比べると改善傾向にはありますが、地域による遵法意識の偏りはますます目立ってきました。
横断歩道での一時停止なんか、ドライバーには何のメリットもない。そう思っている方もいることでしょう。本当にそうでしょうか。
一時停止するクルマが増えてから、交通事故を見なくなったと感じるのは筆者だけでしょうか。みなさんのお住まいの地域ではどうでしょう。ゆとりの心で運転する大切さを、「クルマを運転する資格を持てない子どもたち」が教えてくれていると思いませんか。(水田享介)