これまでのAIと言えば、ユーザーである人間がキー入力で質問したり画面に向かって音声で問いかけて回答を得ていました。
どんなに役立つ回答であってもそれは画面の中の出来事。人の領域まで出てくることはありませんでした。
ところが、ついにというかとうとうというか、AIが画面の中から飛び出して人に代わってパソコン操作を始めたのです。
AI、ついにパソコンを使えるようになってしまう Anthropic「Claude 3.5 Sonnet」新機能
Claude 3.5 Sonnetには新機能「コンピューター使用」機能を追加した。新機能を使うと、AIモデルはスクリーンの内容を理解し、マウスカーソルを動かし、ボタンをクリックし、キーボード入力をするなど、人間のようにコンピューターを直接操作できる...。
(ASCII 2024年10月23日)
AIがパソコンを操作する?!
具体的なイメージがつかめない方も多いと思います。リンク先の記事には、3つのシーンでAIがPC操作をしている動画があるので、それをみればよくわかるでしょう。
人が声やキー入力などで質問や指示を与えると、AIが人間に成り代わったかのように、突然マウスカーソルを動かし、ブラウザで検索したり計画を立案しはじめます。
そして、できあがった予定やプランは予定表に入力し、スクリプトであればアプリに入力して実行させます。
誰も操作していない画面が動くのを見ると、パソコンを乗っ取られたかのようにも見えますが、すべては人間の最初の命令を理解したAIが自発的に遂行しているのです。
これまでは人間が、AIの回答を見ながら必要と思われる検索をしたり入力したりして業務を完成させていました。
「コンピューター使用」とは、人が起こすであろうアクションやパソコン操作をAIが予見して、面倒な事務作業の肩代わりをしているのです。
動画の例では「旅先できれいな日の出を見たいな~」と言うと、AIが旅のプランをお勧めしてきます。出してくる予定を了解していくと行程表を作成し、スケジュールに自動入力。あっと言う間に旅の予定が完成してしまいます。
面倒くさがりな役員が「出張先で温泉に入りたいな~」とつぶやくと、秘書たちがせっせと予定を組んでくれる・・・そんなイメージでしょうか。
パソコン操作なしで用事が足りると喜ぶ人もいるでしょう。要望を言うだけで面倒な入力作業がなくなるなら、パソコンが苦手な人には願ったりかなったりかもしれません。
しかし、AIにパソコンを乗っ取られると恐怖を覚える人もいるはずです。
筆者もこの技術には危機感を覚えます。AIが自律的にパソコンを使い始めると、その管理と制御はユーザーの手を離れて、勝手し放題になる危険があります。
例として適切か判断に迷いますが、プリンターなどの周辺機材がネット機能を持ち始めた頃、メーカーが設定するまま消耗品の発注を機材まかせにしたところ、未使用のインクやトナー、印刷用紙が倉庫に積み上がったという笑えない実話を聞いたことがあります。
便利そうな機能も人間の監視が及ばないと、機械やAIは思わぬ意図で動き出すことになり、いずれはなぜそうなったのかもはや誰にもわからなくなります。AIの先走りを止める人間も機能もなくなると、もはや収拾は不可能です。
AIはまだまだ発展途上の技術です。あまりにも「AIまかせ」、「良きにはからえ」が過ぎると、痛いしっぺ返しを喰らいそうな気がします。(水田享介)