文部科学省が旗振り役として始まったICT教育。これまでの黒板、紙の教科書、先生の対面による授業などのアナログ教育から、インターネットや電子機器を活用した教育をデジタル教育、ICT教育と呼び、手始めに生徒ひとり一台のタブレット普及(「GIGAスクール構想」)に取り組んできました。
※黒板に板書の教育はもう古い?
第11章 ICTの活用の推進
日常生活の様々な場面でICT(情報通信技術)を用いることが当たり前となっている子供たちは,情報や情報手段を主体的に選択し活用していくための基礎的な資質としての「情報活用能力」を身に付け,情報社会に対応していく力を備えることがますます重要...。
(文部科学省・総合教育政策局政策課 令和元年11月)
ただ、いきなりのデジタル化には教育現場が追いつかず、教室ではさまざまなトラブルに見舞われていることは、このコラムでも取り上げてきました。
[053]タブレットは教材になるのか、教育界の果敢な挑戦
(2015年05月19日)
https://www.asuka-g.co.jp/column/1505/007710.html
[835]タブレットの安易な導入が招いた教育現場の混乱
(2023年10月16日)
https://www.asuka-g.co.jp/column/2310/012422.html
[875]徳島県教育委員会のタブレット問題、再考
(2024年03月25日)
https://www.asuka-g.co.jp/column/2403/012537.html
筆者は教育のデジタル化に反対しているわけではありませんが、その導入のための準備、導入手段、デジタル機器の活用方法などにおいて、あまりにも配慮と計画性がないため、教育ツールとしての実績がなかなか上がってこないことに、とても心配しています。
こうしたなか、会計検査院の調査で驚くべき事実が公(おおやけ)にされました。
公立高校に導入したはずのタブレットのうち、3分の1は使われることなく、死蔵されていたというのです。
公立高校向けタブレット端末 3分の1が使われず 会計検査院
...9万5000台余りのことし4月までの利用状況を調べたところ、このうち34%にあたる3万2802台、補助金額に換算して12億7000万円分が一度も使われていません...。調査対象となった自治体の37%にあたる14自治体では、半数以上の端末が使われておらず、このうち1万3000台余りは、今後も利用される見込みがない...。
(NHK NEWSWEB 2024年10月15日)
税金を投入して購入したタブレットをなぜ放置したままにしておくのでしょうか。誰も責任は取らないのでしょうか。
タブレットがひとり一台行き渡れば、ICT教育がすぐ始まるわけではありません。
タブレット学習を始めるにはタブレット上で動くコンテンツ、教育リソースがなければ、勉強はできません。
そのコンテンツは誰がいつまでに供給するのでしょう。
全教科の教材が揃っていたのでしょうか。
先生がデジタル教材を使うには、事前にその教材を深く理解しておく必要があります。先生のこれまでの教え方とは違っていればそこは教えたかを変えざるを得ず、また教材に不足があればどのように方法で補足するのかも準備しておかねばなりません。
一方で、これからはタブレットの購入はすべて自己負担、つまり保護者に負担してもらおうという方向に向かっているそうです。しかも、その負担額はタブレットだけで22万円以上。
高校生の「タブレット端末」自己負担が急増中 保護者は「そんなにお金がかかるなら、高校に行かせられないかも」と悲鳴
(AERA.dot 2024年10月14日)
いま世の中は、衆議院選挙のまっただ中で日々聞こえてくるのは、教育の無償化を叫ぶ候補者たちの声です。
耳には心地よい教育・医療などさまざまな無償化の掛け声はどこへ届くのでしょうか。もしくはどこへ消えていくのでしょうか。(水田享介)