今年、2024年の「土用の丑の日」は2日あり、7月24日(水)と8月5日(月)でした。
スーパーのお総菜コーナーでは、この両日ともウナギの蒲焼きやうな重がずらりと並び、大いに賑わったようです。
ところで6年前の2018年に、ウナギは絶滅危惧種であるにもかかわらず日本でさかんに食べられている矛盾を当コラムで取り上げました。
[570]「うなぎ絶滅キャンペーン」始まる。今日は土用の丑の日
ご存じない方も多いようですが、2014年にニホンウナギは絶滅危惧種になってしまいました。
...うなぎは日本でもレッドリスト入り(※3)しながらも、食品として流通している不思議な希少生物です。このまま完全養殖のめどがたたなければ、いずれ誰も口にすることはできなくなるのでしょうか。
(2018年07月20日)
(※3)
「レッドリスト」(環境省公式サイト内)
https://www.env.go.jp/nature/kisho/hozen/redlist/index.html
2018年当時は、ウナギは受精卵を取ることもふ化して育てることも難しく、わずかな成功例も高コストでした。商売として成立させるには、天然のウナギ稚魚である「シラスウナギ」を捕獲して成魚に育てる旧来の方法しかありませんでした。
とはいえ、天然シラスウナギの価格はどんどん高騰して、2023年は1キロあたり250万円、1匹あたり500円にもなりました。
他の多くの魚にある「養殖魚」のように、ウナギを卵から親まで育てて、そこからまた受精卵を採取する「完全養殖(※)」の低価格化、ビジネス化は悲願に近いものがあったのです。
※2010年、水産総合研究センター(当時)が完全養殖に成功
今年ようやく国の研究機関でコスト的に見合うウナギの完全養殖に成功したそうです。
完全養殖のウナギ 味は?価格は?研究状況の報告会 水産庁
卵をふ化させるところから育てあげたウナギと天然の稚魚を育てた通常の養殖のウナギをそれぞれかば焼きにして関係者向けの試食が行われ、坂本農林水産大臣も参加しました。
(NHK NEWSWEB 2024年7月4日)
そのお味はいかがだったのでしょうか。
坂本農林水産相
「ふわふわでおいしいです。通常の養殖のウナギと比べても全く味は変わりません。・・・」
(同上より引用)
ニホンウナギはその生態がながらく謎に包まれていて、産卵する場所すらわかりませんでした。ニホンと名前があるのに、その産卵場所は日本から2千キロも離れたマリアナ諸島近く。わからなかったはずです。
次の難関はふ化直後の仔魚(しぎょ)からシラスウナギに育てる技術の開発でした。どんなエサをどのように与えれば食べてくれるのか。また水槽の中で生存率を高める方法など、手探りの研究が何年も続いたようです。
水産研究機関の次なる目標は、2050年までに完全養殖ウナギの普及だそうです。
うな重が庶民の味として食べられる日が来ることを夢見ながら、気長に待つことにしましょう。(水田享介)
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【関連リンク】
「2050年に完全養殖ウナギを食べられるのか これまでの成果の普及とこれからの取り組み」
(水産研究・教育機構 養殖部門 山野 恵祐氏)