AIの話題を追っていると、ときおり信じられないものを目にすることがあります。
イーロン・マスク氏の巨大ロケット「スターシップ」、JAXAの新型ロケット「H3」、ESAの「アリアン6」などなど...。宇宙ロケットは沢山あるように思えますが、自前の技術でロケットを打ち上げられる国はいまも数えるほどしかありません。その理由は地球の引力に打ち勝つ強力なエンジンを作るには、乗り越えるべき技術の壁がいくつもあるからといわれています。
ところが近年では、このロケットエンジンもAIの助けを借りて開発が始まったようです。
AIが設計して3Dプリンターで印刷されたロケットエンジンが燃焼試験に成功
ドバイを拠点とするAIエンジニアリング企業のLEAP 71が、大規模計算工学モデルのNoyronが設計して3Dプリンターで出力した液体燃料ロケットエンジンの燃焼試験に成功...。
(GIGAZINE 2024年06月28日)
開発スタッフの誰もがこのエンジンの形状に疑問を持っていないようですが、日本人の筆者はその形状をひと目見た瞬間、あるものとの相似性の高さにとても驚きました。
※ロケットエンジンの造形
(画像引用元:LEAP71 ※1)
※国宝/「火焔型土器」十日町市博物館所蔵・(特別展「縄文―1万年の美の鼓動」・筆者撮影)
AIがデザインしたこのロケットエンジン、どうみても日本生まれの「縄文火焔型土器」にそっくりではありませんか。
火焔型土器は、燃え盛る炎(焔)を表現したといわれるうねるような波の線が特徴で、その線は土器の全体を覆い尽くしています。
ただの炎つながりの偶然なのか、それとも一万年前の縄文人が造形した炎と、燃焼効率を考え尽くしたAIの設計が、必然的に同じ結論に達したのか。
アートを極めた古代人の頭脳と最先端の「計算工学」がロケットエンジンという炎の放出装置に融合したかのようです。
今となっては縄文人にロケットエンジンを頼むことはできませんから、ロケットエンジンの設計AIに縄文土器を作らせてみたいものです。
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ところで、横浜市にある中学・高校(横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校・付属中学校)の女子生徒たちが、今月下旬にイギリスで開催されるロケット大会に自作のロケットを持ち込んで、世界を相手に戦うそうです。
国際大会出場の「ロケット女子」
スポンサー集め980万円獲得 企業に飛び込みアピール
チームは昨年、国際大会への出場がかかる「ロケット甲子園」に初挑戦して優勝。国際大会仕様の新たなモデルロケット開発や英語でのプレゼンテーションの準備に取り組みながら、渡航・活動費の確保に向けて企業にメールを送るなどして支援を求めてきた。
(産経新聞 2024年7月17日)
この中高生たちがロケット開発に打ち込む姿は、自伝的小説『ロケットボーイズ』(ホーマー・ヒッカム・ジュニア 著 /武者圭子 訳 草思社文庫)を思い起こさせます。
ロケットエンジンの開発担当は、中学2年生の女子だそうです。ロケットボーイズの上を行くその姿は、まさしく「ロケットガールズ」。
「リケジョ」ならぬ「ロケジョ」たち。どこまで飛んでいくのでしょうか。将来が楽しみでしかありませんね。(水田享介)
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【参考サイト】
※1 LEAP71
https://leap71.com/2024/06/18/leap-71-hot-fires-3d-printed-liquid-fuel-rocket-engine-designed-through-noyron-computational-model/