夏が近づくと現れる蚊。蚊は吹けば飛んでいく小さく弱々しい見た目ですが、そっと近づいてきて血を吸うと黙って去って行く、なんともいまいましい存在の吸血昆虫です。
ある調査によると、人類史上最悪の殺人者はクマやライオンなどの猛獣ではなく「蚊」といわれています。年間72万人以上(※)が蚊を原因とした病で亡くなっていることから、まさに人類の天敵と言える存在ですね。
※(World's Deadliest Animals/2014.04)「gatesnotes」より
そんな蚊にあらたな発見がありました。
「蚊は腹八分目を知っている」
蚊は獲物から血を吸う時、お腹に余裕を持たせて吸血を止めることはわかっていました。ただそのメカニズムはこれまで未解明だったのです。
このたび理化学研究所と東京慈恵会医科大学の研究チームが、血液に含まれる分子「フィブリノペプチドA」を感知すると、蚊は吸血を止めることが判明しました。
蚊の吸血止める分子発見 危険避け「腹八分目」で―理研など
蚊には、人間や動物の皮膚で血を吸う時間が長引くと攻撃される危険があるため、満腹になる前に吸血をやめる習性がある。...蚊の吸血行動を制御する仕組みの解明は、感染症抑制などへの応用が期待できる...。
(時事通信 2024年6月21日)
※リンク先に蚊の画像があります
筆者のこれまでの吸血体験を振り返ると、血を吸ったばかりの蚊は真っ赤になったお腹を目一杯膨らませており、その逃げ足も心なしかフラフラとしているようにしかみえませんでした。
「もうお腹いっぱいだよ」と知らせる分子を吸血前の蚊に散布するなどすれば、人が蚊に刺される危険は少なくなるかも知れません。
これまで虫除け線香で蚊を遠ざけたり殺虫剤で死滅させようと、人類はあの手この手で薬品開発を続けてきました。しかし、近年ではそれら楽剤に耐性を持つスーパー昆虫が現れて、薬効が無効化する現象が増えているそうです。
分子レベルの対策が実用化するのはもう少し先の話ですが、殺虫剤以外のアプローチとして期待できる研究のようです。
ところで、人間のお腹を腹八分目にしてくれる特効薬はあるのでしょうか。そちらの研究もどなたかにお願いしたいものです。(水田享介)
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■参考サイト
蚊は腹八分目を知る
~吸血停止シグナルの発見~
(国立研究開発法人 科学技術振興機構 2024年6月21日)
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20240621/index.html
※蚊の画像はありません。