東京・上野の国立科学博物館(通称:カハク)にて、特別展「大哺乳類展3」が開催されていることを先日の当コラムでご紹介しました。
[873]特別展「大哺乳類展3」、国立科学博物館にて開催中
(2024年03月18日)
この展示に5月21日から希少な「ニホンオオカミ」標本が加わりました。「ニホンオオカミ」の剥製はこれまで世界に5体(うち国内に3体)しかない貴重な存在でしたが、今回の発見で6体目が加わることになります。
※ニホンオオカミの剥製標本(国立科学博物館所蔵)
しかも、この存在に最初に気がついたのが2020年当時、小学4年生だった小森日菜子さんでした。
発見当時の様子がニュースで紹介されています。
国立科学博物館のはく製「ニホンオオカミ」では?
"東京都内の中学生が最初に気づく『ピピッときました』"
「これはニホンオオカミだなとレーダーみたいな感じでピピッときました」
そう語るのは、東京都内の中学1年生、小森日菜子さんです。
国立科学博物館で「ヤマイヌの一種」として保管されてきたはく製が、現在では、絶滅したニホンオオカミとみられる...。
(NHK 首都圏ナビ/もっとニュース 2024年2月28日)
博物館の研究者でも気づかなかったのは、明治時代から伝えられ来歴も不明だったことや、標本ラベルに学名はなく「ヤマイヌの一種」としか記されていなかったことが原因だったようです。
※標本の台座の裏に貼付された標本ラベル(提供:国立科学博物館)
しかし、当時小学4年生の小森さんは、実物は見たことはなくとも図鑑などでニホンオオカミの特徴を事細かに諳(そら)んじており、標本を見た瞬間にオオカミ「レーダー」が反応したのでしょう。
生き物を分類する上で、見た目(形態的特徴)の観察で行うことは分類学の基本らしく、とても重要なことと言われています。(科学博物館プレスリリースより)
実は大人が見逃していることを子どもたちの目はしっかりとキャッチしている事例はたびたび報道されています。
3歳男児 麻薬の原料 ケシの一種見つけ通報 警察が表彰
徳島市の3歳の男の子が、市内の空き地で麻薬の原料で栽培などが禁じられているケシの一種が生えているのを見つけ、警察から表彰されました。
表彰されたのは徳島市に住む川村悠月くん、3歳です。
(徳島 NEWS WEB 2024年5月30日)
5歳児、違法ケシ発見 茨城・東海 草花好き、瞬時に判別
茨城県東海村舟石川の村道沿いに「あへん法」で栽培が禁止されているアツミゲシが咲いているのを、同村の保育園児、大曽根諒ちゃん(5)が見つけた。
(茨城新聞クロスアイ 2024年5月14日)
8歳の少年が「昆虫と植物の関係についての研究」を100年越しに覆す発見に貢献
(Gigazine 2022年09月06日)
不思議なものや未解明の事柄をチラリと見ただけで、自分が何をするべきか即座に判断する-その能力は、大人も子どもも関係がないことがよくわかります。
発見者の小森日菜子さんはこの春、ニホンオオカミの剥製と特定する論文を書き上げ、電子ジャーナル(国立科学博物館発行)で発表しています。
いま新テクノロジーと騒がれているAI技術はなんでもできるかのように吹聴されていますが、ひとはそれを上回る能力を備えていることを、小学生の小森さんが証明してくれました。
最後に、ニホンオオカミを再発見した小森日菜子さんから、みなさんへメッセージ。
東京・上野 国立科学博物館 ニホンオオカミのはく製公開へ 発見の中学生 "かわいいので見に来てほしい"
小森さんは「ニホンオオカミはかわいいのでぜひ見に来てほしい」と話しています。
(NHK 首都圏ナビ/もっとニュース 2024年5月21日)
特別展「大哺乳類展3」は6月16日(日)までの開催。ぜひとも見に行きたいですね。(水田享介)