つい先頃、世界一魅力的な国はどこかランキング(米出版社の旅行誌『コンデナスト・トラベラー』調べ)で、日本が堂々の第1位に選ばれました。第2位はイタリア、第3位はギリシャ。ちなみに今年オリンピックが開催されるフランスは20位でした。
「世界で最も魅力的な国」ランキングTOP20! 第1位は「日本」【2023年最新調査結果】
(ねとらぼ 2024年5月15日)
旅行誌の読者投票ですから、アメリカ人の好みを反映した結果に過ぎませんが、数ある観光立国の中でも、日本は多くの人が一番訪れてみたい国のようです。
ところが魅力溢れる国、ニッポンに住む日本人の幸福度と言えば、お世辞にも満足行く順位ではありません。
世界幸福度ランキング、フィンランド7年連続首位-米23位、日本51位
世界の生活満足度において、フィンランドは7年連続で幸福度ランキング首位に輝いたが、世界最大の経済大国である米国は初めて上位20カ国の圏外に転落した。米国の若者の生活水準が低下・・・。
日本は51位。30歳未満は73位だったが、60歳以上では36位だった。
(Bloomberg 2024年3月20日)
特に、日本の高齢者が38位なのに対して、日本の若者(30歳未満)は73位とテンションの低さが気になります。
毎年発表されるこの幸福度ランキングですが、筆者はこの調査結果に疑問を持っていました。なぜ、フィンランドは毎年首位なのか。しかも北欧諸国が軒並み上位を占めています。
また、フィンランドの人口は550万人程度。日本で言えば、埼玉県、千葉県、神奈川県はいずれも600万人以上ですから、ひとつの県だけに限って幸福度を高めようとすれば、1億人以上を抱える国に比べると比較的容易でしょう。
なお、マスコミは触れたがりませんが、イスラエルの幸福度ランキングは5位でした。
世界一幸福な国はフィンランド イスラエル5位、北米は年齢差激しく
(CNN 2024年3月20日)
ではこの調査がデタラメかというわけではなく、その調査手法、質問の仕方がくせが強く、国によって異なるお国柄(国民性)が反映しているとのレポートが発表されました。
フィンランドを幸福度トップにしている指標は富と権力に偏っているとの指摘
この幸福度調査は「キャントリルの階梯(かいてい)」と呼ばれるシンプルかつ強力な質問に基づいている・・・。
「最下段から最上段まで『0』~『10』の番号が割り振られたはしごを想像してください。はしごの一番上はあなたにとって可能な限り最高の人生を表し、一番下はあなたにとって可能な限り最悪の人生を表しています。あなたは今、はしごのどの段にいると思いますか?」
(Gigazine 2024年5月19日)
「いまあなたは幸せのはしごの何段目にいますか?」
こうたずねられて、迷いなく「一番上!」と答えるのがフィンランド人(かもしれない)。
※バチカンの螺旋階段(筆者撮影)
このレポートでは質問の方法を変えると、幸福度の測定結果が異なることを示しています。
また、ブータンで「キャントリルの階梯」を質問したというコラムでは、日本人も納得の結果となりました。
人の幸せを測る国際標準とは?
ブータンのように中庸の文化を持つ国において、ハシゴにおける9や10を回答する者の割合は少ない。真ん中に位置する5を基準にしながら、よい状態と感じていれば、6や7を選ぶ傾向がある。2015年のブータンの調査では、この国際標準の質問での回答の平均値は6.88だった。また、調査において日常に感じている感情を尋ねる質問もあるが、ブータン人が感じてる一番多いポジティブな感情は「おもいやり(Compassion)」・・・。
(福井県立大学 地域経済研究所/高野翔)
※天使のはしご
おそらく、日本人も幸せのはしごを見せられたら、多くの人が5段目くらいと答えるでしょう。日本人なら誰もが「はしごを外される」ということわざを思い浮かべるからです。
幸せのはしごとは何なのか。存在しないはしごの目盛りひとつで、国の幸福度に順位をつける--そのことの難しさを感じました。(水田享介)
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【リンク】
World Happiness Report 2024
https://worldhappiness.report/ed/2024/