ゴールデンウィーク明けの先週、ついに恐れていた事件(天体現象)が発生しました。太陽表面で「太陽フレア」と呼ばれる大規模な爆発が起こり、帯電した様々な粒子が「磁気嵐」となって、地球に降り注ぎ始めたのです。
「太陽フレア」11日も発生 通信衛星やGPSなどに影響のおそれ
今月8日から10日までにあわせて6回発生している「太陽フレア」・・・(中略)、72時間で7回発生するのは観測史上初めてで、今後、数日にわたって通信衛星やGPSなどに影響が出るおそれ・・・。
(NHK NEWSWEB 2024年5月12日)
人体に直接の被害は確認されていませんが、これから電気や電波を利用した通信機器に影響が出てくる可能性が指摘されています。
たとえばインターネットが使えなくなったり、位置情報を利用する交通手段が機能しなくなるなど、世界規模でさまざまな障害が考えられます。
この太陽フレア現象は昔からたびたび起こっており、日本での最古の記録は7世紀、発生した際に現れるオーロラ(当時の表記は「赤気」)が見え、雉の尻尾のようだったと日本書紀に記されています。
日本最古の天文記録、正体はオーロラだった 極地研などが見解
飛鳥時代の西暦620年に起きたことが日本書紀に記され、日本最古の天文記録とされてきた現象の正体がオーロラだったとみられると国立極地研究所と国文学研究資料館、総合研究大学院大学の研究グループが16日発表・・・。
日本書紀の推古28(620)年のくだりには「十二月(しわす)の庚寅(こういん)の朔(ついたち)に、天(あめ)に赤気(あかきしるし)有り。長さ一丈(ひとつゑ)余なり。 形雉(きぎし)尾に似れり」と記され、日本最古の天文記録・・・。
(TECH+/マイナビニュース 2020年3月17日)
これ以降も、鎌倉時代、江戸時代に記録が残されています。
800年前に京都でオーロラが見えた! 藤原定家の記録、科学で証明 論説委員・山上直子
・・・赤いオーロラ「赤気(せっき)」の記述はこうだ。1204年2月21日、23日にある。
「23日、晴れ。風が強い。(中略)燭台に燈をともす頃、北・東北の方向に再び赤気が現れた。それは山の向こうに起きた火事のようだった。重ね重ねとても恐ろしい」
(日本経済新聞 2017年4月23日)
江戸時代の観測記録には、京都の街中から見えた巨大な赤いオーロラが極彩色の図解を添えたものが今に伝わっています。(※日経新聞の記事に図解あり)
江戸時代に最大級の磁気嵐 京都でオーロラ、古文書記述と一致
江戸時代の1770年に、太陽の爆発現象によるとみられる史上最大級の磁気嵐が発生していたとする解析を、国立極地研究所などのチームが21日までにまとめた。京都市でオーロラが見えたという古文書に残る絵図が、計算で再現した見え方と一致した。
(日本経済新聞 2017年9月21日)
今回の太陽フレアでは北海道の各地でオーロラが観測されているようです。北欧の寒冷地か北極圏などに行かないと見えないオーロラが、日本国内で見られるのはかなりお得かも知れません。
ただし、ひとたび磁気嵐障害が発生すると、スマホはもちろん、カーナビが使えなくなったり交通機関が停まるなど、思わぬ事態に巻き込まれます。くれぐれもご注意ください。(水田享介)
【追記】
このコラムの執筆時点では太陽フレアによる被害報告はありませんでしたが、その後、米国で電力やGPS、通信に異常が発生したとのニュースが流れました。
太陽フレア 観測史上初の「3日で7回」 GPSにも影響 オーロラも各地で
アメリカの海洋大気庁は11日、電力系統やGPSなどで異常が報告されたと発表しました。具体的な状況は明らかにされていません。
イーロン・マスク氏が率いる宇宙開発企業「スペースX」では、衛星インターネットに支障が出た・・・。
(ANN NEWS 2024年5月12日)
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◆関連情報
江戸時代のオーロラ絵図と日記から明らかになった史上最大の磁気嵐
(国立極地研究所 2017年9月20日)
https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20170920.html