「できる!」ビジネスマンの雑学
2024年04月26日
[884]GW明けから今年も始まる?新人退職に思うこと

 先日の報道番組(国際報道2024-NHKBS 2024年4月23日)で中国の今の若者を特集していました。

 中国のSNSでは若者の姿をあらわす言葉は「仏系」、「十不青年」だそうです。

 「仏系」とは日本の「草食系男子」から社会性を取り去ったような存在で、社会との軋轢や摩擦を回避して、大きな望みも期待も持たず、何にもこだわらない姿勢で省エネで淡々と生きようとする若者たちを指します。

 番組では「寺ブーム」と称してもいましたが、仏系、寺とくれば、天台宗などの仏教へ帰依する若者がいるかと思いましたが、その紹介はありませんでした。党の指導なのか宗教活動につながる動きはできないのか。番組としてはもう少し堀り下げてほしかったです。

 また「十不青年」とは、かつて言われていた「寝そべり男子」からさらに進んだ形態で、社会で生きるのに必要な経済活動から可能な限り接触を断ち、買わない、助けない、家族も子どもも家も持たないとないない尽くし生活を送る極端にストイックな生き方を表しています。

【時事評論】「十不青年」、中国の若者たちの絶望と静かな抵抗
 中国経済の低迷が長引く中、中国の若者たちは将来に絶望しています。彼らの精神状態はネット上の流行語から窺い知ることができます。
「看中國」 翻訳・銀河 2024年4月4日

 調べてみると、どちらの用語も中国では5年以上前から使われていましたが、最近はこうした若者の存在が目立ち始めたようです。

 そこには成長に陰りを見せる中国経済からくる未来への不安、完成した監視社会、一党支配社会がもたらす閉塞感や失望があるようです。いまさら社会体制に疑問を持ったところで何も変えられはしない。中国の若者につきつけられる現実です(そう思っていない人民もいるかもしれませんが)。その中でつつがなく生きる知恵の行き着く先に、このような若者が産まれたと言えるでしょう。

 ◆

 日本では今年も、新入社員が研修もそこそこにさっさと辞めていきます。退職代行会社は4月から大忙しとニュースになっています。

「会社と合わない」 退職代行サービスに早くも新卒の依頼殺到 SNSで違和感増幅
 新年度が始まって半月が過ぎたが、新入社員の退職希望を企業側に伝える「退職代行」サービスに、早くも依頼が殺到...。
ITmedia NEWS/産経新聞 2024年04月19日

 学生からいきなり社会人になれば、大人のルールになれず、学生時代にはなかった社風(会社ルール)に直面すると、誰しも戸惑い、強いストレスを感じることでしょう。そうなれば誰しもその場から離れたい仕事に行きたくないと思い、ついには会社を辞めたくもなるでしょう。

 でも考えてみてください。学生時代はせいぜい4年程度。初年度は新入生(一年生)ですが数年で先輩になれる特殊な環境でした。
 一方で、会社勤めは十年以上は若手扱い。自分から辞めなければ会社員生活は数十年も続きます。学生時代と同じ感覚で会社に居ることがそもそも間違ってはいませんか。
 就職するならば、学生時代のうちからインターンや先輩訪問などで、大人の社会を横目で見る努力が必要だったはずでは、と筆者は思います。

 ◆

 昨年、筆者はふと思い立って瀬戸内のとある離島を目指しました。その島、大崎上島は「しまなみ海道」「とびしま海道」の中間にありました。レモンの産地として有名と聞きましたが、行ってみるとどこにもレモンは売っていません。

 港で「今夜の宿はどうするか?」、「向かいの島に宿も選果場もあるよ」とチケット売り場のおじさんに言われるがまま連絡船に飛び乗り、行き着いた島のとある宿屋に泊まりました。到着して知ったのですが、そこはみかんで有名な島、大崎下島だったのです。

 みかん以外何もなさそうな島でしたが、宿の主人との話はそれを補う面白さがありました。

 食堂には不釣り合いな立派な木造舟の模型があったので、何かと尋ねると「みかん船」でした。

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※「みかん船」模型

木造農船 大長丸|呉市の文化財
 大長丸は,みかん運搬のための独自の構造を持った船です。全国的にみて,沿岸・島嶼部において船を使った出作の事例は希有...。
呉市/市有形民俗文化財 平成15年12月15日
https://www.city.kure.lg.jp/site/bunkazai/siyuminbun-4.html

 「もう今は誰も乗っていないよ。離れ小島までみかん栽培する時代じゃあねえからなぁ。」

 みかん栽培が盛んだった昭和時代、周囲に点在する小島も空まで耕すようにしてみかん畑にしたそうです。秋になると目の前の入り江はみかん船で埋め尽くされ、子どもたちは舟から舟に跳び移って対岸まで渡れたほどだった。

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※大崎下島・大長の入り江

 舟尾には手こぎ用の櫓(ろ)があり、エンジンは付いていません。

 「行く先々の小島のみかんを収穫しては、選果場のある港まで運ぶのを毎日毎日、数ヶ月も続けて一年の稼ぎを得ていたんさぁ。」

 筆者:「エンジンもなくみかんを満載した舟を漕ぐのは大変だったでしょう」

 「なんてことないさ。朝、みかん畑の島に向かって潮が流れだすから、それに乗っかっていけば、あっという間だ。夕方は戻りの潮が出てくるから、楽なもんよ。肝心なのは潮の流れだぁね。」
 「俺らが子どもの時分は、海に投げ出されても泳ぐな、浮いておれ、ときつく言われたよ。じっと堪えて浮いていれば、どこかの島に流れ着く。」

 瀬戸内の離島に伝わる生きる知恵は、いまも島民の中に生き続けています。橋で本土とつながった今も、舟の便利さはクルマに代えがたいものがあるそうです。

 島の住民には、天にそびえる橋まで昇るのがひと苦労。クルマなら楽かも知れませんが、高い通行料金は大きな負担になります。

 瀬戸内の穏やかな海を思い出していたら、こんなことを考えていました。

 思っていた仕事とちょっと違ったから、自分にあわない社風だからと、慌てて辞めて、その次によりよい環境が手に入るのでしょうか。失礼ながら、新卒という価値があったからこそ、あなたでも入社できたはずです。

 少なくとも会社は新人のあなたを社会から守ってくれているはずです。

 あなたがもうちょと成長して、社会の荒波をひとり泳げるようになるまで-しばしの間、潮の流れに身をまかせてみてはいかがでしょうか。(水田享介)

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【関連】
○大崎下島マップ
24042603.JPG

○瀬戸内海マップ
24042604.JPG


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