徳島県の中学・高校で起きているタブレット故障問題。当コラムでも昨年10月に取り上げました。
[835]タブレットの安易な導入が招いた教育現場の混乱
昨年から小学校や中学校でタブレット端末の修理費の話題がニュースで出始め、今年からはより大規模かつ深刻な問題となっています。
(2023年10月16日)
https://www.asuka-g.co.jp/column/2310/012422.html
このタブレットの故障は、昨年のうちに解決してはいませんでした。それどころか日を追う毎に不良率は上がり続け、当初の17%から今年3月半ばには、55.6%にまで悪化しています。(※文末にまとめ)
徳島県内のタブレットの納品完了は中学校は2021年2月末(899台を4千万円)、高校は2021年4月末(16500台を8億7百万円)となっています。
※徳島県資料「1人1台端末導入経緯(CHUWI県調達分)」 よりまとめ
(【第4回資料】1人1台端末導入経緯(義務・高校分類).pdf)
つまり2021年春から使い始めて、2年足らずで故障は県内全域に拡大し、3年目には半数以上のタブレットが使えなくなりました。徳島県が8億4千万円をかけた「1人1台端末」計画は、わずか2年で水泡と帰したわけです。
(最新のまとめでは2月19日以降から故障台数は9000台の水準)
この問題の本質は、短命仕様のタブレットを選んだ徳島県教育委員会の選定ミスです。
※画像はイメージです。本文との関連性はありません。
徳島県教育委員会はバッテリー膨張による破損は、2023年が酷暑だったからと説明しましたが、秋以降も続いたためその根拠は覆されました。
次にバッテリー故障の原因を調査しますと発表しました。が、そのような調査が県教育委員会にできるはずもなく、また調査そのものに意味はありません。彼らはやるべき仕事をはき違えた議論を繰り返しています。
日本型組織の悪しき習慣がこの会議を支配しています。問題解決の最短距離はわかっていても責任問題が惹起することを恐れて誰もそこには触れず、発生している事故原因を調べると報告書を書くことでやっている感を演出しているだけなのです。
そのバッテリー不良の調査は誰がどのように行い、その結果から問題解決にどう結びつけるのか。こうした工程表がないので、県教育委員会が次に何をするのかは全く見えません。会議の出席者は、原因がわからなくては次のステップに進めないなどと言うことでしょう。
役人特有の「堂々巡り」議論に持ち込む責任回避術にしかみえません。
この会議ではのちに、内蔵バッテリーがダメなら外部バッテリーをつないで動作させたらどうかなどと、技術的可能性を無視した意見までとびだすことになります。
解決策を打ち出せないまま、不良バッテリーを抱えたタブレットは、県内全域で膨張していき、液晶や本体を破壊し始めました。また、問題のなかったタブレットも充電しても10分程度しか稼働しなくなりました。
追加調達などで数を確保しようとしましたが、それも同型機種のようで事故原因をさらに増やしただけのようです。
この問題を解決するには、導入したタブレットをすべて回収し、契約者に返品のうえ全額返金させるほかありません。回収した資金で改めて適切な機器を導入することが妥当な解決策でしょう。
ところで、1980年代のPC黎明期からコンピュータを仕事としてきた筆者は、タブレットを使った学習には否定的見解を持っています。
友人の子息が昨年、教育大学に進学した際、大学指定の12インチ・タブレットを25万円超(基本セットのみ)で購入するよう強く求められました。これを聞いた筆者は、すぐにそれを上回る性能の15インチ・ノートパソコンを5万円以下で用意してあげました。
その教育大学が用意した資料には
「将来、タブレットで教育を教える学生にはタブレットでの学習が必要」
とありました。それは間違いです。
タブレットで教える側がタブレットしか使えないのであれば、タブレット教育はなりたちません。教員はタブレットを上回る性能のノートかデスクトップPCを使いこなせなければ、教えることも教材を作ることも不可能でしょう。数多くのゲームタイトル、社内教育資料、eラーニングシステムを手掛けてきた筆者の経験をもとにこの発言をしています。
学習を受ける側の生徒たちはできるならばタブレットではなく、バッテリーを交換できる仕様の15インチモニター・ノートパソコンをお勧めしておきます。
最後に、ICT教育にまん延するこのタブレット信仰は何とかならないのでしょうか。文部科学省がタブレット教育から離れられないのなら、いっそのことスマホを使ってICT教育を始めたらどうでしょう。
スマホなら学生のほとんどが自己負担で持っています。少なくとも8億円もの国費損失は防げますよ。(水田享介)
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【過去の関連報道】
[ ]内は[故障台数/故障率]
タブレット端末故障問題 知事"法的手段も含め厳正に対応"
(NHK NEWSWEB/徳島 NEWS WEB 2023年10月13日)[-2859/17%]
https://www3.nhk.or.jp/lnews/tokushima/20231013/8020018787.html
終わりの見えない県立学校のタブレット端末故障問題
その経緯と現状とは【徳島】
(日テレNEWS 2024年2月21日)[-7945/52%]
https://news.ntv.co.jp/n/jrt/category/politics/jr519e07a17f214a7e89e3d3eedb0d984b
県立学校のタブレット端末を巡る問題
現在7000台以上不足で新端末の調達は早くとも夏ごろ【徳島】
(日テレNEWS 2024年2月27日)[-9000/54.7%]
https://news.ntv.co.jp/n/jrt/category/politics/jrb9a23f2ba6154cbd85743b09a416fc44
<県立学校のタブレット問題>
調達業務を担った業者やメーカーの責任を問う声が相次いだ【徳島】
(日テレNEWS 2024年2月29日)
https://news.ntv.co.jp/category/society/jr4fee0cd75b214d5ea824e546f4356d23
ひろゆき氏も思わず「安物買いの銭失い」
徳島の高校で「中国製タブレット」故障続出、9000台が「使用不能」
(SmartFLASH 2024年3月11日)[-9173/55.6%]
https://smart-flash.jp/sociopolitics/278220/1/1/
後藤田知事も激怒、高校生に配備のタブレット「3年もたず半数超が故障」の異常
後手に回る教育委員会、中国メーカーからは返答なし
(共同通信/47リポーターズ 2024年03月17日)
https://www.47news.jp/10662885.html