「できる!」ビジネスマンの雑学
2024年02月02日
[862]右か左か。あなたならどちらを選ぶ。究極の選択

 右か、それとも左か。

 どちらを選べばいいのか。瞬時の判断を迫られたとき、あなたは正しい方を選ぶ自信はありますか。

 先日とても興味深く、また考えさせられたニュースを目にしました。

10人死亡の陸自ヘリ事故、正常なエンジン切って墜落か 防衛省調査
・・・2基のエンジンのうち1基にトラブルが起きていたことが防衛省の調査でわかった。安全確保のため異常が生じたエンジンを切ろうとし、誤って正常な方を切ったことを示すデータも残されていた。
朝日新聞デジタル 2024年1月27日

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※多用途ヘリコプター・UH-60JA/ブラックホーク(陸上自衛隊HPより引用)

 あってはならないことですが、この記事では2つあるエンジンのうち、ひとつが故障したためそのエンジンを切るはずが、正常な方を切ってしまったとあります。

 この事故は、亡くなった10人のうち着任したばかりの師団長を含む8人が幹部という重大事故でしたので、筆者もよく覚えています。

陸自ヘリ事故 死亡の1人は前の第8師団長 坂本雄一陸将と確認
NHK NEWSWEB 2023年4月21日

 ただ、朝日新聞社の記事は独自取材の報道であり、他社および防衛省広報でも、いまだそのような発表はありません。

宮古島の陸自ヘリ墜落事故原因「相当程度絞り込み」
公表時期の明言避ける|木原防衛相
 木原稔防衛相は30日の閣議後記者会見で、宮古島周辺で昨年4月に発生した陸上自衛隊の多用途ヘリコプター「UH60JA」の墜落事故の原因について「相当程度の絞り込みはできている」・・・。
防衛日報デジタル 2024年1月30日

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※出典:陸上自衛隊第8師団ホームページ
https://www.mod.go.jp/gsdf/wae/8d/index.html

 訓練を受けた有資格者のパイロットが、正常なエンジンを切ることはありうるでしょうか。もしそういう操作をすれば墜落することは明らかで、そもそも双発エンジンの意味がありません。

 しかし、左右取り違えが原因の航空事故は少なからずあります。

 アメリカでは陸自ヘリと類似機種のUH-60ブラックホークが、片方のエンジンが不具合を起こした後、正常なエンジンがシャットダウンされて墜落しています。

間違ったエンジンのシャット・ダウン
この悲惨な事故の原因は、No.2エンジンのガス・プロデューサー・タービンの不具合のためシングル・エンジン状態になった後の操縦士の不適切な緊急操作であった。操縦士は、正常に作動しているNo.1エンジンをシャット・ダウンしてしまった・・・。
AVIATION ASSETS/陸軍航空の情報センター

(原典:FLIGHTFAX, U.S. Army Safety Center 1997年06月 「They SHUT DOWN the WRONG ENGINE!」
https://safety.army.mil/Portals/0/Documents/ON-DUTY/AVIATION/FLIGHTFAX/Standard/Combined_Year/1997_Flighfax_Combined.pdf#page=53

 このレポートによると、同様の事故への対応についてパイロットにアンケートを取った結果、驚くような事実が判明しました。

70%を越える操縦士が「間違ったエンジンをシャット・ダウンする可能性があると思う」と回答し、40%が「訓練状況又は実状況のシングル・エンジン状態において、どちらのPCLを操作すべきか混乱したことがある」・・・。
(同上記事より引用)

 米陸軍パイロットに限定したアンケートですが、潜在的に間違った選択をする可能性がとても高かったのです。また、パイロット自身も日頃からそうしたミスを起こすのではと気にかけていたことがうかがえます。

 民間航空機では2015年に、台湾で同様の事故が発生しています。

台湾の航空機墜落、操縦ミスで正常なエンジンも停止
 台湾飛航安全調査委員会(Taiwan's Aviation Safety Council)の報告によると、墜落直前にパイロットが「わあ、間違ったレバーを引き戻してしまった」と叫んでいたことが、ブラックボックスの記録から明らかになった。
AFP BB NEWS 2015年7月2日

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TVBS NEWS〈獨家〉復興客機墜河/高架橋上目 民航機墜河畫面
https://www.youtube.com/watch?v=lYczDsj0ATI

 この事故では43人もの方が亡くなっています。双発の航空機は片方のエンジンだけでも、安全に着陸できる設計になっており、この場合も通常なら小さな事故で済んだ可能性があります。



 筆者も含めた一般人なら普通の生活をしていれば、このような究極の選択を迫られることはないでしょう。

 しかし、日本に住んでいる以上、地震などの自然災害は避けることはできません。もしもの場合は、助かるための優先順位を日頃から付けておくこと。常日頃からリスクを減らす生活を心がけること。検討する時間もないほど緊急の用件なのか-いちど冷静になること。

 できることはこれくらいでしょうか。いずれにせよ命をかけた究極の選択だけは避けたいものです。(水田享介)

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