呉市海事歴史科学館・大和ミュージアムでは、ただいま「第31回企画展 日本海軍と航空母艦」を開催しています。
期間は令和6(2024)年3月31日(日)まで。
※1月23日(火)~1月26日(金)まで臨時休館
「第31回企画展 日本海軍と航空母艦」
(大和ミュージアム 公式サイト)
日本海軍では、大正時代から航空母艦の開発・研究を行っており、昭和に入ると次々と空母を建造。と同時に各種艦載機の開発も進め、他国に先駆けて世界初の空母機動部隊を運用しました。
今回の企画展では、「赤城」、「飛龍」、「翔鶴」といった歴戦の航空母艦を模型(1/200)で再現。また当時の写真・図面なども豊富に展示しています。
※館内には全空母の甲板が一堂に会する
筆者は昨年11月にこの企画展を見学しました。模型とはいいながら忠実に再現された航空母艦は、いずれも初めて目にするものばかり。文字(艦名)でしか知らなかった空母をじっくりと鑑賞できて感無量でした。
また、「赤城」の艦内を再現した模型には、いかに天井の低いところで整備に当たっていたの一目瞭然。当時の整備員の苦労を偲ぶことができました。
※「赤城」の艦内模型
展示品で注目したいのは、その当時に発行されていた艦内新聞、「あかぎ新聞」です。タイトルに当時の文字で「6.5.15」とあり、昭和6年(1931年)5月15日を示しているのでしょうか。
シンブンニュース
和を以て貴しと為す
聖徳太子十七憲法の大精神は「和」の一字に盡くこれ日本国体の精髄なり「平和」をその相とし「和合」をその用とし「融和」をその性とす万物相協ひ万用相和す各々その所を得て安住す安住には動揺なしその動くは力の発なり「徐(しず)かなること林の如く迅きこと風の如く」なる大調和力ありてこそ法も活き人も活き」るなれ孔子は「礼の用は和を貴しと為す」といへり礼は体の整える姿なり「体は礼に訓ず礼は法なり」とは徳安大師の言なり(中略)・・・此の「和」を実行すべき使命は正に昭和日本の選民頭上に帰す 振(しん)へ粛(つつし)め。
「あかぎ新聞」の巻頭言より引用
※()内は筆者による読みの追記
※「あかぎ新聞」
日本国の精神は聖徳太子が説く「和を以て貴し」にあり、平和を願ってはいるが、文末に「振へ粛め」(緩んだ気持ちを引き締めよ)とあるように、空母に乗り込む兵士のどこか覚悟を決めたような緊張感を、筆者は感じ取りました。
左ページの「編集室より」には「赤城新聞を再刊する」とあるため、以前からあかぎ新聞は存在したようです。また、定期購読費は「一ヶ月十銭前後」、紙質は「見本よりもズイブン上等のものを使用」するとのこと。
小咄あり、短歌あり、イラストも。男ばかりの艦内生活を和らげる新聞として活用が期待されていたようです。
※「翻鶴」
空母「赤城」はこの新聞が出た11年後、昭和17年(1942年)6月5日、ミッドウェー海戦で被弾し、翌6日に沈められました。2019年に沈没地点が特定され、昨年になって船体の撮影に成功しました。
81年ぶり空母「赤城」の姿...
元兵士「本当によかった。戦死した乗組員の冥福を祈りたい」
太平洋戦争のミッドウェー海戦で沈没した旧日本軍の空母「赤城」の姿が81年の時を超え、深い海の底で確認された。
(読売新聞オンライン 2023年9月16日)
※最強空母と言われた「大鳳」の全通甲板
敗戦を経験した日本では、空母は他国を攻撃する兵器といわれ永らく建造されることはありませんでした。批判を浴びながらも、平成にようやく建造された全通甲板のある輸送艦(揚陸艦)「おおすみ」は、今回の能登地震でも有効活用されています。
海自の輸送艦「おおすみ」が"海上基地"に!
能登半島沖で物資輸送に従事 どんな様子?
海上自衛隊は2024年1月9日(火)、輸送艦「おおすみ」が能登半島付近の洋上で、物資輸送などに従事していると発表。公式Xで海上基地(シーベーシング)となった「おおすみ」の様子を公開・・・。
(乗りものニュース 2024年1月11日)
2024年、日本は「かが」、「いずも」という実質的な空母をもつに至りました。昭和史に残る数々の航空母艦の来歴を見ながら、令和ニッポンにいる私達ははなにを思うでしょうか。(水田享介)
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大和ミュージアム 公式サイト
https://yamato-museum.com/