ひと昔前の山梨県名物といえば、富士山とほうとうしかなかった・・・気がするのは筆者だけでしょうか。ところがいまや桃やぶどうといった山梨産フルーツがいずれも高評価を受け、山梨県はおいしい果物の一大産地としてのブランドを確立しました。
近年では「フルーツ王国」と自称し始めた山梨県ですが、今度はそのフルーツで苦境に立たされています。
「ブランド価値おとしめる」ふるさと納税の返礼品
県産フルーツは1割から2割が低評価 山梨県が対策へ
ふるさと納税の返礼品で人気の定番となっている山梨県産フルーツですが、1割から2割が「不良品」などの低評価だったことがわかりました。
・・・5段階中3以下の低評価だった割合は2022年度が20.7%、2023年度は14.2%でした。
(テレビ山梨 2023年11月22日)
確かに「フルーツ王国」の山梨県から届いた返礼品が、しかもブランド品のシャインマスカットがおいしくなければ、王国の名が廃(すた)るというもの。
※山梨県産ぶどうの詰め合わせ
さっそく県は動いた-と筆者は思ったが、実は昨年2022年の低評価は20%で今年よりもひどかった。昨年から動いておけば今年2年続けての低評価は防げたのではないのか。そんな疑問もわくほど対応は遅れがちでした。
とはいえ、今年の夏は農産物には暑すぎました。山梨県人の友人も「今年(2023年)は猛暑でシャインマスカットのできはよくない」と伝えてきました。
シャインマスカットはあの透き通るような薄緑色がおいしさをそそります。その中に黄色味がかった房を見かけることがあります。日にちが経ちすぎて色が褪せたと判断されるのか、売れ行きは悪いようです。見た目重視で選ぶ消費者にも受け入れがたい外観のようです。
そして相場の半値近くの見切り価格となることもあります。しかし黄色がかったものは、色違いというだけで、実は甘さはより強くなります。
シャインマスカットは黄色い方が甘い-このことを学んでいた筆者は、今年ほどたくさんのシャインマスカットを食べたのは初めてでした。
※手作りチーズケーキと山梨県産シャインマスカット
そのうえ長く続いた残暑のおかげなのか、10月に入っても美味しいシャインマスカットが都内のスーパーに出回るように。それは主に長野県産でしたが。
返礼品のクレームもその影響を受けたのでしょうか。スーパーで安く買える果物を返礼品に選んでしまった・・・。ひょっとしてそんな後悔の気持ちが、届いたシャインマスカットの味をさらに悪くしたのかもしれません。
ところで、シャインマスカットは広島生まれとされていますが、山梨県もひと役買っていることはご存じでしょうか。
シャインマスカットのルーツは旧ソ連にあった?!
貴重な8ミリ映像からひも解くブドウ開発の歴史
1965年以降、国は品種改良には積極的な導入が必要として、旧ソ連から74品種のブドウを輸入・・・この中の輸入されたブドウの1つがカッタクルガンという品種です。
シャインマスカットはカッタクルガンと甲斐路を掛け合わせた白南と安芸津21号から誕生・・・。
(テレビ山梨 2023年9月14日)
今から60年前の1963年、ブドウ研究のため旧ソ連を訪れた日本のブドウ農家の人々は、ブドウ原産地(中央アジア)を訪れ、多種多様なブドウに触れて衝撃を受けます。
この視察の旅の後、旧ソ連から74種のブドウを輸入。本格的な品種改良に取り組みました。そのなかにシャインマスカットの元となるカッタクルガンがあったのです。
昭和の日本人の行動力が、こんにちのシャインマスカットの隆盛を産み出したのですから、なんとも感慨深いですね。
昭和は遠い昔になったけれど、決して古くさくはない。昭和生まれの筆者ですが、声に出して言いたい気分です。(水田享介)