南北に長い福岡県のちょうど真ん中あたり、かつての秋月藩近くにある「筑前町立大刀洗平和記念館」が、いま話題になっています。
この記念館が建つ場所にはもともと旧日本陸軍の航空基地があったため、展示内容も基地の歴史を中心としています。また、国内でも唯一の「零戦三二型」実機と「九七式戦闘機」実機を展示しており、零戦やレシプロ機ファンなら知らない人はいない存在でした。
※ここにしかない貴重な零戦三二型実機
[673]「陸軍大刀洗飛行場」展、新宿にて開催
(2019年04月17日)
https://www.asuka-g.co.jp/column/1904/010942.html
※最寄り駅は甘木鉄道の太刀洗駅
※「筑前町立大刀洗平和記念館」外観
その零戦の隣に昨年、戦闘機「震電(しんでん)」(実物大模型)が新たな展示に加わりました。震電は旧日本海軍と九州飛行機が共同開発した戦闘機だったため、故郷の福岡県にあってもおかしくはないのですが、突然の展示に筆者は驚きました。
震電といえば、プロペラと主翼を機体後部に配した独特のエンテ型。1945年8月3日、テスト飛行までにこぎつけはするも、実戦には間に合わなかったため、戦績ゼロのマイナーな幻の戦闘機です。
そんな戦闘機がなぜ展示に至ったのか。また復元模型とはいえ実寸大、かなりの製造費だったはず。復元するなら旧陸軍にゆかりのある航空機でもよかったのではないか。
そんな疑問を抱きつつ、筆者は2023年7月にこの記念館を再訪し、震電との対面を果たしました。
プロペラが後部にあり、細長い前脚と腰高の主翼により操縦席は二階に上がるような高さに位置します。筆者はその独特のフォルムに魅入ってしまいました。
※記念館売店で購入した震電関連の書籍
『兵器たる翼』(渡辺洋二・光人社NF文庫)、「丸・2022年10月号」(潮書房光人新社)
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今月に入り、ある映画の公開と共に、この震電誕生の秘密がようやく明かされたのでした。
「ゴジラで使われたものです」震電の展示先ついに暴露!
監督もさっそく反応
展示開始から1年4か月ようやく出自が判明
「情報解禁!」という一文で始まるポスト(旧ツイート)で、大刀洗平和記念館が公表したのは、その実物大模型の「震電」が『ゴジラ-1.0』で使われたものだ・・・。
(乗りものニュース 2023年11月16日)
情報解禁!!(2023年11月15日)
令和4年(2022年)7月から常設展示している『震電(実物大模型)』、実は現在大ヒット上映中『ゴジラ-1.0』のために製作され、撮影に使用されました。・・・貴重なこの機会に、公開中の『ゴジラ-1.0』とあわせて、『震電(実物大模型)』及び『企画展』にお越しください。
(「筑前町立大刀洗平和記念館」・公式サイトより引用)
※情報解禁を告げる大刀洗平和記念館のX
映画『ゴジラ-1.0』に登場した戦闘機「震電」は、まさにこの機体だったのです。
映画の中で震電とゴジラが戦ったそうですから、時代設定は1945年辺りでしょうか。当時の日本は米英連合国軍と戦っていましたから、さらにゴジラが参戦したのでは、日本軍は戦意喪失です。
ところで、なぜゴジラ映画に震電が登場したのか。その謎を解くには、映画館に足を運ぶしかなさそうですね。(水田享介)
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筑前町立大刀洗平和記念館・公式サイト
http://tachiarai-heiwa.jp/