「できる!」ビジネスマンの雑学
2023年10月27日
[838]平安時代の一大国難、「刀伊の入寇」

 「元寇」(1274年・1281年)と言えば、鎌倉時代に起きた大事件として誰もが習ったことでしょう。

 ところがこれ以前の11世紀はじめにも、元寇と類似した海からの侵略があったことはあまり知られていません。

 11世紀初頭といえば日本では平安時代。京の都では「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の...」と詠む藤原道長が、天皇に我が娘を次々と入内(じゅだい:嫁入り)させ、この世の春を謳歌していました。
 この頃、いわゆる「国風文化」と呼ばれる貴族文化も絶頂期を迎えており、「源氏物語」や「枕草子」など王朝文学の傑作が誕生していました。

 しかしちょうどその頃、九州では大変な事件、「刀伊の入寇:といのにゅうこう」(1019年)が勃発していたのです。

 かく言う筆者も学校で習った記憶がありません。

 筆者がこの侵略戦を知ったのは、先日のNHK番組「英雄たちの選択」で取り上げたことによります。

暴れん坊公家 平安朝を救う~藤原隆家 刀伊の入寇事件~
藤原道長の全盛期、九州に異民族が襲来する大事件が起きた。対馬・壱岐は壊滅。国家の危機に対応したのは道長のライバルだった公卿・藤原隆家。いかに外敵を撃退したのか?
NHK BS・「英雄たちの選択」

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 平安貴族と言えば恋愛にうつつをぬかし、軟弱の代表のようにしか見えませんが、外敵を打ち破るだけの軍事力は本当にあったのでしょうか。

平安時代最大の対外危機「刀伊の入寇」
...平和ボケの朝廷に代わり、力を発揮した「さがな者」藤原隆家
隆家は、「天下のさがな者」(たちが悪い不良)の異名を持つ一方で、今から約1000年前、外敵の大規模な侵略を受けた九州北部で奮戦し、平安時代最大の対外危機を乗り切る立役者となっている。
読売新聞オンライン 2023年7月19日)

 遣唐使を廃止して以降、日本は内向きの国となり、周辺の国や民族の動向に無関心となってしまいました。そのせいで世界情勢に疎いまま数百年を過ごしてしまったのが、平安時代だったのです。
 日本独自の王朝文化が花開いた恩恵もありましたが、平和な時代がいつまでも続くわけがありません。

 中国大陸で戦乱が起こると、はじき出された民族はよその土地に移動するか海を渡るほかありません。

 そうして海を渡ってやってきた刀伊の正体とは、中国東北部にいたツングース系民族の女真族(じょしんぞく)だったのです。ちなみに女真族は満州民族とも呼び、のちに清朝王国を中国大陸に開きました。

 日本は弥生時代から古墳時代、飛鳥・奈良時代まで、隣の朝鮮半島や大国・中国の動静につねに気を配っていました。
 もし、海外の動きに注意していれば、このような侵略をやすやすと許さなかったはずです。

 NHKの番組では刀伊の侵略を受けた際、朝廷はどう対応したのか検証しています。なんと、国防をアウトソーシング-他人任せで済ませました。その危機意識の希薄さは今に通じるものがあり、とても興味深いものでした。

 「さがな者(不良)」の藤原隆家が太宰府で政務を執っていたのは、偶然とはいえ日本にとっては僥倖でした。

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 来年のNHK大河ドラマ『光る君へ』では、侵略者を追い払った藤原隆家もドラマに登場する予定だそうです。(※藤原隆家役は「ちむどんどん」でお兄さん「ニーニー」を演じた竜星涼さん)

 「英雄たちの選択・暴れん坊公家 平安朝を救う ~藤原隆家 刀伊の入寇事件~」の再放送は、NHK BSP では111月1日(水)午前8:30~9:30です。

 21世紀の今、もし国難が降りかかってきたとき、日本はどう立ち向かえばいいのか。現代に生きる私達にも重く問いかけてきます。(水田享介)

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「英雄たちの選択」・放送予定
https://www.nhk.jp/p/heroes/ts/2QVXZQV7NM/schedule/te/N79JJYJV6K/

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