先月末の8月30日、実在する銀行名で一本のメールが配信されると、日本中でちょっとした騒ぎになりました。
そのメールのタイトルとは・・・。
「【重要・緊急】入出金を規制させていただきました...」
すわっ、最近はやりの詐欺メールか。発信者もメアドもごていねいに都市銀行名と実在メアドを名乗っている。
受信しただれもがそう疑っていたのですが、実はこのメール、本当に都市銀行が発信者だったのです。
メールタイトルの後半には
「・・・などのメールは詐欺です」
つまり、このようなタイトルで始まるメールは詐欺メールですと、注意を喚起する本物のお知らせメールだったのです。
では、なぜこのようなまぎらわしいことを銀行が行ったのでしょうか。
「入出金を規制させていただきました」、
詐欺メールかと思ったら実は三井住友銀行のお知らせだった
今回の取り組みの背景について、三井住友銀行によれば、フィッシングサイトに誘導されてしまい、預金を不正に引き出されるといった被害にあうユーザーが急増している・・・。
(ケータイWatc/関口 聖 2023年8月30日)
詐欺メールはただの迷惑メールというだけでなく、実害も広がっているようです。
「8月に金融庁などが発表した預金の不正送金被害は、今年上半期、過去最多の件数(2322件)に達し、被害額も30億円・・・。」
(前出サイトより引用)
詐欺メールの多くは、発信元がわからないように発信地やサーバーを偽装して、追跡をかわしています。また乗っ取ったサーバーから発信したりするなどして、元手を掛けずに大量のメールを日々発信し続けています。
つまり、犯罪に経費がほとんどかからないのに、何十億ものキャッシュを手にしている、悪い意味でもっとも効率のよいダークビジネスとなっています。
騙される人がまだいるのか、だまされる方が悪い、とバッサリと切り捨てる方もいるでしょう。
しかし筆者はそう簡単なことではないと思います。とある個人経営の宿屋に宿泊したところ、70代の経営者の方から予約に使っているPCが調子が悪いので調べてくれと相談を受けました。
メールソフトを見てみると、受信箱には大量のスパムメールが着信しています。そのすきまに宿泊予約メールがあるような状態でした。
なぜこんなにスパムメールが届くのか、宿のご主人と話したところ、なんとすべてのスパムメールを読んで、返事ができるところには丁寧な返信までしていたのでした。
これでは次から次へとスパムメールを呼び込むだけです。
メールを送ってくる人に全幅の信頼を寄せているその姿は、宿泊業のホスピタリティの鑑(かがみ)ですが、いまの時代にはそぐわないことを説明して、スパムメールを全削除して、セキュリティアプリの導入をお勧めしました。
人の無知や善意につけ込み、そこを手掛かりにさらなる犯罪に及ぶのは許されることではありません。
姿の見えない犯人たちはちょっとしたトリックで電子決済という手段でお金をやすやすと盗んでいきます。被害者が実害に気がつくのは、つねに犯行後ですから、被害状況の説明すら困難です。
電子マネーや電子決済など決済の仕組み、認証セキュリティの守り方など、もっと教育の段階や市民講などで周知していくことが大切ではないでしょうか。(水田享介)