ながらく日本経済を牽引してきた自動車業界ですが、近年は世界的にEV(電気自動車)へのシフトが進み、このままでは日本は衰退するのではないかと言われています。
先月には日本のマスコミも次の特集記事を掲載しています。
"逆風"の中国市場 日本の自動車メーカーに危機感
いま、日本の自動車メーカーのトップたちが急速な変化に危機感を抱いている市場があります。
世界最大の自動車市場・中国です。
EV=電気自動車の急速な普及を追い風に、中国メーカーが販売を伸ばし、これまで存在感を示してきた日本メーカーが苦戦・・・。
(NHK NEWSWEB・ビジネス特集 2023年5月26日)
世界最大の中国市場はEVを中心に売れており、ガソリン車を扱う日系の販売店には売れる商品がなく、勝ち目はないかのようです。
雑誌では日本車メーカーの危機感を煽るような記事を掲載しています。
もはや日本の自動車メーカーは後塵を拝している。
上海モーターショーの熱狂に見た"不都合な真実"と猛烈な危機感
2023年の「上海国際モーターショー」。約91万人が訪れる世界最大規模の自動車展示会となった上海の地ではっきりと見えてきたのは、主に電気自動車(EV)を中心とした圧倒的ともいえる中国メーカーの勢い・・。
(WIRED 2023年5月27日)
もう日本の自動車メーカーに勝機は訪れないのでしょうか。気落ちした気分に合った筆者でしたが、つい最近、これまでとは真逆のニュースが流れてきました。
いずれの記事も、中国や欧州でのEV人気も販売も陰りが見え始めているというものでした。
発売即テスラ超え、50万円激安EV「宏光MINI」が急失速の背景。1~4月販売は26%減
50万円EVとして日本でも大きな話題になった上汽通用五菱汽車の「宏光MINI」の販売が急失速・・・。宏光MINIが一人負けしている背景には、同車種が創造した格安超小型車EV市場が、補助金の打ち切りや競合の増加によって、早くもブームが終わってしまった・・・。
(BUSINESS INSIDER 2023年5月30日)
中国で強まるPHVへの回帰 補助金打ち切りでEVに割高感
競争激化でメーカー同士の場外戦も勃発
これまでは電気自動車(EV)に注目が集まっていたが、EVの航続距離への不安が根強いことに加え、補助金の打ち切りで割高感が強まったEVからの回帰の流れが生まれ始めている。(石井宏樹)
(東京新聞 TOKYO WEB 2023年6月29日)
注目するポイントは中国のEV人気が補助金制度にあったとの見方です。補助金が打ち切りになったとたん、値下げをしてもEVが売れなくなったとどの記事も指摘しています。
自家用車の販売シェアは市場原理で動いていますから、個人の財布の紐との相談で、割高と感じれば売れなくなるのは当然のこと。
これまで中国のEV人気は政府によって作られた虚像だったのでしょうか。
日本の道路でよく見かけるPHV が、これからの中国のトレンドになるようです。日本車メーカーの技術的限界を説いていた中国も、本音は別の所にあるようです。
時を同じくして、ガソリン車の廃止を決めていたEU内でも、EV販売が不振となっています。フォルクスワーゲンはEV生産ラインを縮小すると、先日発表しました。
フォルクスワーゲン、一時的にEV減産へ
予想を下回る需要 「顧客の強い抵抗」と従業員
フォルクスワーゲンは、ドイツ国内の工場の1つでEVモデルの生産を一時的に縮小する措置を導入・・・。EVの需要は、当初予定されていた生産台数を最大30%下回っている・・・。
リース経済相は、付加価値税の引き下げを含め、EV購入に対する新たなインセンティブ(奨励・補助金)の導入について議論するよう求めている。
(AUTOCAR JAPAN 2023年6月29日)
この記事にはおまけが付いていて、ドイツの経済相が中国のように「EV購入に対する新たなインセンティブ(奨励・補助金)の導入」が必要とコメント。やはりどこの国でも下駄を履かせないとEVは走れないようですね。
筆者としては、EVにしても太陽光発電にしても、持続可能社会の技術ではなくエコでもないと思っています。一台当たり数百㎏にもなるバッテリーや十年足らずで性能が落ちる太陽光パネルはどうするつもりでしょう。処分方法も廃棄コストも置き去りにして、今あるガソリン車や従来の発電方法を捨てさせようと急ぐ余り、未完成技術という馬脚を現したのが現状ではないでしょうか。
もちろん、電気自動車も自然エネルギーも将来性のある技術です。一方でこのエネルギー源をどの国、もしくはどの企業が支配するか、主導権を争う戦いとなっています。
第二次大戦の前後に起こった石炭から石油へと転換した時と同じようなエネルギー革命が、ふたたび勃発しているのが、いまなのです。
美辞麗句に惑わされず、未来でも安心して使える交通手段やエネルギーを選択したいものですね。(水田享介)