讃岐うどんといえば、独特の強いコシとイリコだしで知られるB級グルメの筆頭です。大規模展開するうどんチェーン店が国内至る所にできたことも、一役買っているようです。
筆者も高松市出張の折、朝・昼ともに讃岐うどんを食べて、その奥深さを堪能しました。
ところがその「讃岐という地名に疑義」を呈する驚きのニュースが出てきました。
あなたが食べた「讃岐うどん」、実は8割方は讃岐(香川県)で生まれていないです。しかも誰もが認めるうどんのコシ、それはひとりの豪州女性の舌に支えられているのです。
うどん 豪産小麦が支える
産地オーストラリアと日本の開発最前線
讃岐うどんの本場、香川県。実は原料の小麦の多くが「オーストラリア産」です。
「コシがあっておいしい」「ぷるんと跳ね返る弾力が心地よい」訪れる人がそう口をそろえるのは、香川県の老舗うどん店。・・・この店のうどんに使われているのは、オーストラリア産の小麦・・・。
(NHK NEWSWEB 高松放送局 富岡美帆/シドニー支局 青木緑/2023年5月10日)
日本産の食材がいつの間か安価な外国産に取って代わる、よくあるストーリーと思われがちですが、実は讃岐うどんに限っては、そうではありません。
うどん店主自らが小麦粉の適性、うどんにした時の味などから、あえて豪州産を選んでいるのです。
その立役者が「ヌードル博士」と言われるラリーサ・ケイトさん。記事によると、ケイトさんはうどん生地の色合いやコシはもとより「弾力」や「のどごし」まで厳しくチェック。うどん粉として日本に輸出するにはケイトさんのテストに合格しなければならないそうです。
筆者はこの記事をTVニュースでも見たのですが、さすがうどん博士、ケイトさんは食感の表現は日本語で「モチモチ」と発言していました。
うどん通の人がいくらモチモチを語ろうと、それはケイトさんのお墨付きをもらった小麦粉なんですね。
ところでオーストラリアという国は和牛のおいしさをいち早く掴み、「WAGYU」という国際ブランドを生み出しています。日本の和牛種をオーストラリアで独自に品種改良、肥育したものとか。和牛の血統を引き、味わいが近いのに価格が高額でないため、安定した人気を得ています。
実は香川県にはうどん用小麦粉として「さぬきの夢」という有名ブランドがあります。しかし多くのうどん店が豪州産を選んでいるという現実には勝てません。香川県農業試験場ではさらなる品種改良に取り組むそうです。
しかし、新品種が誕生しても、香川県だけの栽培では日本のうどん消費量を賄えるはずはないでしょう。やはりその種をオーストラリアに渡して生産してもらうほかなさそうです。讃岐うどんも「WAGYU」と似たストーリーになるのでしょうか。
日本生まれの料理だし、食材も日本独自だから、日本人にしかこの味はわからない、と言っていたのは遥か昔のこと。もうそういう思い込みは通用しません。日本食は世界中の生産者と消費者に支えられる時代になったと認識を改めたほうがよさそうです。(水田享介)