2023年の春、コロナの沈静化を機に、筆者は2度の旅を実行しました。一度目は4月半ば。米子から広島県呉市、愛媛県を通り高知までの取材旅。美術館、記念館を回るだけでしたが長年あたためてきた取材コースだってので満足のいく旅でした。二度目は結婚式出席のための九州行き。福岡・佐賀・大分と三県を行き来しました。
※高知から羽田へ向かう全日空機から見た富士山
このふたつの旅で、以前とは変わった景色をいくつかご紹介します。
1)旅行者の目を気にしなくなった地元の人々
以前の旅では、地元の人たちは旅行者を「旅行者」として接することが多かったのですが、今回はそうした雰囲気が薄くなりました。
もう何年も旅行者を見なかった影響でしょうか。佐賀県の和食店で皿うどんの硬麺を頼むと「パリパリ?」と聞き返され、何のことかわからないうちにさっさと調理を始め、「はい、パリパリ」と出されたのは、注文通りの皿うどんでした。パリパリの意味を説明してほしかったです。
また、他の県では地元の酔客が子どものような大騒ぎをしたり、入場チケットや切符の買い方がわからずマゴマゴしていてもスタッフの助け船がなかったりと、旅行者目線では困惑することが何度かありました。
松山港から市内に行く方法がどこにも書いてなく、移動手段がわかりませんでした。結局スマホで検索して、目の前のバスがそうであることを知りました。さらに市外を走る市電と市内の市電はそれぞれ別の路線図で、接続がわからずとても苦労しました。
2)旅慣れない人が増えた?
これは3年近いコロナのせいですが、旅慣れない人が多く、その対処に苦慮しました。航空便はほぼスマホ表示のEチケットになりましたが、チケットをスマホに出せずチェックインを止める人がいました。また出したバーコード表示が大きすぎて機械で読み取れなくなった人もいました。いずれもスマホ操作に慣れないため、お気の毒ではありますが、その場に立ち尽くすため、後ろの人の搭乗が遅れることになります。
3)アナウンスを聞かず勝手に行動する旅行者
博多から別府行きの特急列車に乗ったときのこと。前の席のヘッドレストの裏側に切符入れがありました。つまり自分の切符を前の席のポケットに入れておけば安心というサービスです。ただし、この列車は小倉駅で進行方向が逆になるため、ここで座席を180度回転して進行方向に向かって座り直します。その結果、前の座席に入れていた自分の切符は二つ後ろの座席に行ってしまいます。それを注意する車内アナウンスは何度も流れていました。しかし私の隣の若者は、イヤホンをつけて音楽か映画に没頭していたのか、切符は注意通り後ろの席に・・・。気づいた乗客が切符を届けてくれたのに、若者は事情を飲み込めていなかったようでした。
始発駅の博多駅で私が少し遅れて席にたどり着いたとき、この若者は指定席車両にもかかわらず、自分の荷物や脱いだ服を目一杯、私の席に広げていました。
※別府市内にある日本初の木造アーケード
大分から成田へ向かうLCC航空便の中のできごと。持ち込んだアルコール類は飲酒しないように搭乗前から5回も6回もアナウンスがありましたが、私の隣の男性は思い切った行動に出ました。シートベルト着用のサインが消えると同時に、バッグからかぼすサワー缶を取り出してブシュッ!
すぐに男性CAがやってきて没収となりました、ひと口も呑まずに。
お金を払って旅をするのですから、リラックスして旅を楽しめばいいのです。しかし、自宅にいるようなリラックス度で旅されてはやはり周囲は困ります。
旅のやり方を再発見する旅。そんな試行錯誤の旅がこれから1年か2年の間、続くのかなと思う筆者でした。(水田享介)