半導体産業といえば、いまでは台湾・韓国などの海外勢に市場を独占され、日本の半導体が世界を席巻していた昭和の時代のあの昔日の面影は、もう戻らないーーと思われていました。
ところが、驚くようなビッグニュースが飛び込んできました。
佐賀大学の嘉数研究室で世界の半導体をリードする新技術が開発されたのです。
佐賀大学、ダイヤモンド半導体パワー回路を開発
佐賀大学は2023年4月17日、ダイヤモンド半導体パワー回路を開発し、高速スイッチング動作と長時間連続動作が可能なことを確認したと発表した。Beyond 5G基地局や通信衛星、電気自動車などの用途に向け、実用化研究を加速させる。
(EE Times Japan 2023年04月18日)
NHK の科学番組「サイエンスZERO」で、わかりやすく解説したサイトが公開されています。
桁違いの大電力制御の力をもつ「ダイヤモンド半導体」の可能性
ジュエリーとしておなじみのダイヤモンドが、次世代の半導体素材として注目されています。その理由は、「桁違いの大電力を制御できる可能性」を秘めているから。
(サイエンスZERO)
現在の半導体はシリコン素材で作られています。ところがこのままでは今後の大容量・高速の演算や通信には対応できないそうです。
この問題を解消するため、次世代の素材として炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)を採用する技術が先行していました。
ダイヤモンドは素材候補に上がっていましたが、半導体にするにはハードルが高すぎるため、次の次の開発候補、二の次扱いでした。
そのダイヤモンド半導体が次世代半導体の完成前に、日本で誕生したのです。スマホでたとえて言うなら、ガラケーが誕生する前、黒電話の交換としてiPhoneが登場、通信でいえば4Gが実用化する前、3Gの次に6Gが登場するような衝撃的な出来事なのです。
世界の半導体産業は今後、このダイヤモンド半導体技術を中心に動いていきます。そのときの核心的技術は日本の半導体企業が主導し、日本の半導体が世界をリードするでしょう。
この技術の検証はまだ途上のため、断定はできませんが、その耐久性の高さから宇宙利用でも役立つそうです。
いま宇宙開発で課題となっているのが、太陽光フレアによるスーパーフレア、磁気嵐です。
現在の技術で作られた人工衛星は磁気嵐に弱く、ひとたびスーパーフレアが起こると通信衛星などが破壊されます。インターネットはもちろん、主要な通信が途絶すると、現代社会が成り立たなくなると危惧されています。
スマホはもちろん、実用化間近の自動運転、ドローン、エアタクシー、航空機などすべてが停滞するか、大事故が予想されます。
このような予想される事故を描いたマンガに「宇宙兄弟」(小山宙哉・モーニング KC/講談社)があります。第29巻に磁気嵐に遭遇する月基地の奮闘がリアルに描かれています。嵐は頭を伏せていればやり過ごせるとお考えの方は、ぜひご一読ください。
「宇宙兄弟 Official web」
https://koyamachuya.com/
実はこのダイヤモンド半導体の開発成功は、マスコミではなく身内からの情報でした。
筆者の実兄が、佐賀大学の関係者(佐賀大学農学部卒/現佐賀大学OB会会長)で、まっさきに話を聞かされました。
兄の話ですから、話半分にお読みいただきたいのですが・・・。
この研究は20年以上前から始まり、なかなか成果が上がってこないため、研究費削減や研究支援の終了は何度も議題に上がっていたそうです。それを押しとどめて、やらせてみようじゃないかと言ったのが、農学部の僅かな数人だったそうです。
そこから開発成功にまでたどり着いたのですから、兄の意気が上がるのも無理からぬこと。
IPS細胞の山中教授の次にノーベル賞を獲るのは、佐賀大学(農学部)だそうです。(受賞するなら嘉数 誠先生のはずが)
実用化となる日をわくわくしながらお待ちしています。(水田享介)
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佐賀大学理工学部 嘉数 誠先生
「世界初ダイヤモンド半導体パワー回路を開発
-高速スイッチング、長時間連続動作を実証-」
(佐賀大Press/先生の活動 2023年04月19日)