京都駅に着くと、誰の目にも入るのが京都タワーです。
京都駅の向かい、ビルの上に乗っかるようにして建つタワーは高さ131メートル。ろうそくの形を模したデザインと言われています。
このタワーが建つ際には、「東寺の五重塔」(高さ57メートル)より高い建物は京都には要らないと反対運動が起きたそうです。
パリのエッフェル塔が建つときの騒動に近いものがあったようです。さすが、世界的な観光地の古都、京都ですね。
その後、2007年には京都市内の高さ制限31メートルという規制を盛り込んだ「新景観政策」が施行されて今に至ります。
その京都でいま、この規制が見直されています。
京都市、景観保全の高さ規制を一部緩和へ...
子育て世代定住や企業誘致目指す
市は歴史的な町並みを保存するため新景観政策を導入し、ほぼ全域で建物の高さを上限31メートルに制限してきた。しかし、規制の影響などで不動産価格が高騰し、子育て世代や企業の流出が続き・・・。
(読売新聞オンライン 2023年3月30日)
京都で生まれ育ったのなら、京都に住み続けたいと思うのは自然なことです。しかし、京都市ではそれもままならないようです。
高騰する不動産に若い夫婦は手が出なくなり、市外や県外に流出が続いています。固い絆でつながってきた地蔵盆の集まりも、年々参加者が減少しており、後継者不足も起きていると聞きます。
京都市は慢性的な財政赤字に悩まされており、すぐに解決できる手段は打てそうにありません。
京都市の財政問題、人口流出どうにかして
京都府議選・京都市議選、有権者の関心は?
府内の課題で関心のあることは、「京都市の財政問題」が62%と最多だった。
他の項目では、住宅価格の高騰により京都市で子育て世代の市外流出が深刻化していることもあり、「京都市からの人口流出」が43%に・・・。
(京都新聞 2023年4月4日)
確かに建物の規制緩和は京都市の負担なく、すぐに実行できる妙案かもしれません。
手ごろな価格のマンションが増えれば、人口流失は食い止められて、その結果、税収が上がることも期待されます。
しかしこれまで守り続けてきた京都らしい雅(みやび)な景観を、簡単に手放すことにはならないでしょうか。
五十年後、百年後の京都を見据えたグランドデザインができる人材は、どこかにいないものか。残された時間はそうながくはありません。(水田享介)