子どもの頃、「こっちの水はあ~まいぞ」とホタル狩りの経験をした方はどれほどいるでしょうか。日本ではもう過去の風物詩であり、歌の中にだけある幻影かもしれません。
夜の闇を美しく演出するホタルのヒカリですが、しっぽを光らせる理由は仲間を呼び集めるためと思われてきました。
ところが最新の研究では、さらに一歩踏み込んで、いくつかのメッセージを含んでいることが解明されたのです。
ホタルの光、実は「こっちに来るな」のサイン 中部大など解明
ホタルの美しく瞬く光はこれまで、繁殖のため雌雄が互いの存在をアピールする求愛サインだと思われてきた。だが中部大などの最新研究で、実は逆に「こっちに来るな」という意味のメッセージであることが明らかになった。種を維持していくためには、ホタル同士が互いに近い方がいいはずだが、・・・。
(産経新聞・びっくりサイエンス 2023年4月8日)
アピールのはずが、拒絶とは。その秘密は、メスホタルの交尾前と交尾後の変化が鍵となりました。
蛍の光、交尾していないメスだけ瞬かず、ヘイケボタルで発見
中部大学応用生物学部の大場裕一教授(発光生物学)らの研究グループは、・・・(1)草に止まっているオスは、瞬きを伴って光りながら交尾していないメスに近づく、(2)交尾していないメスは、光に瞬きがなく、1回の発光時間がとても短い、(3)交尾済みのメスはオスに似て、瞬きを伴う光り方をする・・・オスが、瞬かないことで交尾できるメスを見つけていることを突き止めた。同時に、メスが交尾の有無で、瞬きの有無を変えていることを発見した。
(ナショナルジオグラフィック・草下健夫 2023年3月15日)
交尾前のメスは瞬かず短く発光してオスを引きつけます。交尾を終えたメスは今度はオスのようにゆっくりした瞬きに変わります。
オスのように光ることでこれ以上オスを引きつけず、産卵に専念するのではないか、と推定できるとのこと。
詳しくは、上記サイトにある「ヘイケボタルの光り方」の図解で確認できます。
実は、ホタルたちの婚活は命がけです。成虫となったホタルは、エサを食べることはせず、幼虫時に蓄えた栄養と日々の水分だけで生きなくてはなりません。水分のみですから、長くて20日程度の寿命の間に、飛び回り、出会い、卵を残してその一生を終えるそうです。
ホタルの光る仕組みが明らかに!
1億年以上前の突然変異が生んだ進化とは?【ホタルの雑学】
成虫のホタルは、草や木の葉の裏で昼間はじっとしています。栄養を幼虫時に貯めておき、移動や熱を伴わない発光エネルギーを使って、寿命7日から20日の間、子孫を残す活動に専念します。
(DIGGITY.info 2023年4月9日)
初夏の夜を彩るホタルのヒカリの乱舞。妖しくもまた儚いものですね。(水田享介)