つい最近のこと、筆者は痛恨の失敗をしてしまいました。ふと気がつくと財布がなくなっていたのです。
買い物に行こうとして財布を探しても、いつもの場所にありません。締め切りに追われ数日出歩かなかったこともあり、財布を手にすることがなかったのです。
しかも、そのことに気づいたのが2日後のこと。
ここ数日の行動を必死に思い出し、最後に買い物をしたのが近所のスーパーでした。ご相談窓口に行くとすぐに財布が出てきて一件落着しました。
それからひと月後、郵便局で荷物を発送しようとしましたが、今度は財布を家に忘れてきていました。一文無しでは荷物は送れませんね。
しばらく窓口周辺を見回して・・・「電子マネーで出荷できますか?」と尋ねると大丈夫でした。
スマホをかざしてチャリン音ひとつで用事が足りました。
財布を忘れてもスマホ決済で支払いができるなんて、なんて便利になったものか。ついそう思ってしまう出来事でした。
しかし、世の中はなおいっそうの便利を求めているようです。
今年4月から給与振り込みが電子マネーでもできる「デジタル給与払い」が解禁になりました。
au、楽天もデジタルマネー給与 参入申請、ペイペイに続き
KDDIと楽天グループは3日、企業が給与をデジタルマネーで支払う「デジタル給与」事業への参入を厚生労働相に申請した・・・。スマホ決済アプリのPayPay(ペイペイ)に続く動きで、NTTドコモも近くキャッシュレス決済サービス「d払い」の指定を申請する・・・。
(共同通信 2023年4月3日)
デジタル給与払いに参入する企業は、国内スマホ業界の4社が出そろいました。すでに電子マネー決済を運営していますから、順当な結果と言えるでしょう。
しかし、これまで給与振り込みを担ってきた銀行がひとつも参入しないのはどうしたことでしょうか。
ノウハウがない?既得権益を手放したくない?いろいろな理由がありますが、優秀な人材を擁しているはずの銀行業界が給与支払いのデジタル化を、このまま指をくわえてみているだけでしょうか。
上記の記事と同じ3日に、全国銀行協会の加藤勝彦会長が記者会見を開いています。
口座介さないデジタル給与を警戒 全銀協会長「ビジネスに影響」
全国銀行協会(全銀協)の加藤勝彦会長(みずほ銀行頭取)は・・・企業が給与を銀行口座を介さずスマートフォンの決済アプリに入金する「デジタル給与」の普及に警戒感を示した。
(共同通信 2023年4月3日)
銀行業界としては「アプリを利用した個人間送金ネットワークの拡充など利便性を高める取り組みを進める」そうです。
今はまだスマホ業界が参入を申請したばかりですから、実際の運用は今年の夏以降にスタートすると見込まれています。
便利にはなりますが、ますますお金の重みがなくなると感じるは筆者だけでしょうか。スマホのバッテリーが切れたら、給料に手をつけることもできません。
給与が振り込まれる時に、あの「チャリーン」の音で知らされるのだけは勘弁してほしいですね。(水田享介)