当コラムでは、筆者がこれまでに受け取った詐欺メールを事例に、詐欺を見破るポイントをあげて、だまされない心得を紹介してきました。
ところが昨年のこと、メールやメッセージではなく、筆者のスマホに宅配業者をかたる電話が直接かかってきて、ワンタイム認証コードを聞き出されてしまいました。被害はありませんでしたが、まんまと騙されてしまったのです。
[705]あっ、だまされたかも。特殊詐欺の被害に遭った話
ケータイに着信が入り、すぐに切れました。050- から始まる見知らぬ電話番号。取材先から内容の確認かもしれないと二回目の着信はすぐに電話を取りました。
(配達員)「〇〇〇運輸です。お預かりしている荷物のご住所が不鮮明のためお電話を差し上げています。」
(当コラム 2022年07月06日)
最近、筆者のパソコンに届く詐欺メールで多いのが、ポイントの残高を確認してくださいというものです。ポイントに興味はなく読まずに削除しているので、被害に遭う心配はなさそうです。
面倒なのがスマホに飛び込んでくる発信者不明のショートメッセージです。宅配業者をよそおい「不在のため荷物持ち帰り」ましたと連絡してきます。ところが、どの宅配会社(ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便)も「私たちから届け先に持ち帰ったとメッセージを送ることはけっしてない」と断言しています。
こうした事例はここ数年頻発したためか、送り主も受け取り人も宅配伝票に電話番号は記載しなくてもよいことになりました。そのため宅配業者がスマホにメッセージを送ること自体がおかしいのです。
先日、以下のようなメッセージが筆者のスマホに着信しました。
※筆者に届いたメッセージ。誰彼かまわず大量に送信する典型的スパムメール
ひと文字一文字に濁点が入っています。日本語を理解する人であればこんなメッセージを送るはずがありません。
おそらく日本語をまったく読めない外国人が、自国の言語環境で何度もコピーして使い回しているうちに、濁点が入ったのでしょう。言語コードが違うと起きることがあります。
これまでリンク先をクリックしたことはありませんが、NHKのサイトでリンク先に行くと何があるのか、実際に検証した興味深い記事が掲載されました。
その通知、偽物です だまされないために
宅配便の不在通知をかたった短いショートメッセージ。
思わず開いてしまった人、いませんか。
それ、「スミッシング」と呼ばれる詐欺の入り口の可能性が高いんです。
(NHK NEWSWEB 2023年3月15日)
リンク先に飛ぶと、問い合わせへの応答は一切なく、いきなり「IDとパスワードの再確認」が始まるそうです。
仕組みとしてはオーソドックスな「フィッシング詐欺」ですが、SMSなので「スミッシング」というそうです。
「○○カードが不正使用された」、「不正アクセスを検知・・・ログインしてください」、「○○銀行口座に異常な取引が確認」などと、人をドキッとさせる言葉を並べて、リンクのクリックをせかすのはどのメッセージも一緒です。
この本物そっくりのニセサイトにIDとパスワードを入力しても、自分のカードや口座、荷物がどんな状態かを教えてくれるわけではありません。
筆者に送られてきたメッセージを見直してください。そこに送信主の名前はなく、受け取った筆者の名前も荷物番号もありません。それは詐欺犯が、同じ文章のメールを不特定多数の相手に一斉に送っているからです。万にひとりでも騙されれば儲けもの、それがフィッシング詐欺の本質です。
もし、あなたがIDとパスワードを入力すると、たちどころにその情報は詐欺犯に流れて、そのIDはパスワードを変更するなどして乗っ取られてしまいます。
恐ろしいのは、それから先に起こることです。メールアドレスやIDを発信者にして大量のスパムメールを送信する踏み台に使われ、高額のメール発信料金があなたに請求されます。預金口座とリンクしている場合は、預金を引き出されたり、勝手に送金されたり、ギフトカードの購入に使われます。また、利用価値の高いIDであれば、闇サイトで転売されてしまいます。あなたの本名のまま悪用されると、すべての悪事はあなたがやったことと記録されるでしょう。
筆者はツィッターでもこうした詐欺メッセージを公開して注意喚起していますが、ツィッターにも詐欺メッセージが届きます。
筆者が知る限り、Amazon などIT関連の外資企業ですと、このようなお気楽な募集はしていません。少なくとも英語能力がなければ勤まりませんので、TOEIC等のスコアは必ず聞いてきます。また、セミナーへの事前登録や招待がなければ、面接の機会すらありません。
おそらく闇バイトのたぐいでしょう。
このようなメッセージの特徴は、
1)顔写真に若い女性を使っている
2)日本語の表現に間違いがある
3)すぐにLINEに誘導する
この3つがそろったメールは内容を確認するまでもなく詐欺です。
スマホが普及したからこうした怪しげなメッセージが飛び交う羽目になったとお考えの方も多いでしょう。しかし、電話と郵便だけが通信手段だった昭和の時代にも、怪しげな電話や勧誘ハガキは届いていました。
日本国内だけの詐欺師を相手にすればよかったのが、世界中の詐欺師から日本人がねらわれるようになった。それだけは確かなようですね。(水田享介)