街中で、電車やホームで、エスカレーター、スーパーやコンビニでも、スマホにくっつかんばかりに顔を近づけて画面を見つめる人々の姿・・・。こうしたシーンは至る所で見受けられ、日常風景と化しています。
ところが最近、冬山のゲレンデでスマホがただならぬ迷惑な存在になりつつあることをご存じでしょうか。
スマホが勝手に緊急通報をかける事例が頻発し、救急体制を麻痺させていることがスキー場を抱える各県で大きな問題となっています。
ゲレンデで転んだら「119番」に自動通報...最新iPhoneで多発
最新のスマートフォンやスマートウオッチ(腕時計型端末)などが意図せず作動し、誤って119番通報されてしまう事例が相次いでいる・・・衝突や転落を検出し、自動で通報する機能があるためで、多くがスキー場からだった。
(信濃毎日新聞デジタル 2023年1月11日)
ではスマホのどの機種で発生しているのでしょうか。
県内での誤通報は米アップル社の最新のiPhone(アイフォーン)やアップルウオッチで主に起きている。
(信濃毎日新聞デジタル 同上記事)
日本のスマホ市場でiPhoneの出荷台数シェアは、43.5%(2022年4月~9月)でトップ。半年間で640万台を出荷しています。そのほとんどが5G対応機種であるため、年間では1,300万台以上の新型iPhoneが、この自動通報機能を搭載していると考えられます。
また、アップルの公式サイトでは、この機能を「衝突事故検出」と呼んで、大々的にアピールすらしています。
公式サイト https://support.apple.com/ja-jp/HT213225 では、
iPhoneユーザーが「自動車で重大な衝突事故」に遭うと、「自動で救助を要請」する
と新機能のすばらしさを紹介していますが、
「現実はスキー場で転んだだけで救急車を呼ぶ」
きわめて迷惑な機能になっています。
記事によると、長野県内の消防局では昨年9月からわずか4ヶ月で276件の誤報を受取り、その対応に追われて初動対応への支障となると報じています。
しかも、出荷時のデフォルトではこの機能は「オン(有効)」となっています。
スマホを携帯したまま行う激しい動きのスポーツはいくつもあります。スキー、スノーボード、スケートボードはその筆頭でしょう。
アップルがこの機能をユーザーの安全のために必要とするのなら、まずやるべきことは、アップル自身が救援を受け付けるコールセンターなり救援組織を用意することです。誤報か必要な救援かを区別して、それから救援要請を出せば済む話です。
安易にその国の救命インフラに自動連絡をつなげるべきではありません。
アップルは、自動運転車の開発を進めており、革新的なアップルカーの発表も近いと噂があります。おそらくスマホやスマートウォッチで培ったアプリを搭載してくるでしょう。その中に「衝突事故検出」機能が含まれるのは間違いなさそうです。
Apple Carはいつ登場?自動運転は可能?アップルがEVをつくる狙いを考察
製品の仕様においては、最新のiPhone 14シリーズやApple Watchに衝突事故検知機能を組み込み、さらにiPhone 14シリーズでは衛星通信を使ったサテライトSOS機能を実現するなど、緊急時にユーザーの安全を確保するための仕組みを充実・・・。
(DIAMON ONLINE/大谷和利 2022年12月23日)
しかし、どこの自動車メーカーもやっていない自動緊急通報を、アップルだけは自社のクルマに搭載する気でしょうか。
「衝突は事故と断定するスマホ」を世界中にばらまくメーカーに、製造者責任と社会の協調性を教える人はいないのでしょうか。(水田享介)