「できる!」ビジネスマンの雑学
2022年12月19日
[757]唐突に始まったイーロン・マスク氏への信任投票。その結果は?

 FIFAワールドカップ2022/決勝戦は、深夜3時(日本時間)を過ぎても勝利の行方がわからない接戦となり、眠気も吹き飛んだ方も多かったでしょう。筆者もそのひとり。延長戦も点の取り合いとなり、PK戦によってアルゼンチンの優勝で幕を閉じました。

 さて、そんな興奮冷めやらぬ今朝9時過ぎ(日本時間)、驚愕のニュースが飛び込んできました。

マスク氏、ツイッターCEO辞任すべきか投票開始 「結果に従う」
[18日 ロイター] - 米実業家イーロン・マスク氏は18日、自身がツイッター社のトップを辞任すべきかを問う投票をツイッター上で開始した。同氏は「投票結果に従う」としている。
ロイター 2022年12月19日午前9時)

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 イーロン・マスク氏のツィート(@elonmusk)では、昨日はスペースXのロケット打ち上げの模様をツィートし、ドイツでテスラ車量産が順調なことをリツィート。サッカーW杯の動画をいくつもアップして、観戦を楽しんでいたようです。

 マスク氏がどこからツィートしているかわかりませんが、日本の午前8時20分の投稿時間から計算すると、米国内であれば日曜日の午後の時間帯です。まっ昼間ですから魔が差した行動とも思えません。

 誰もがイエスかノーのボタンを押せるSNSで、CEOの信任を問いかけ、その結果に従うとは尋常ではありません。マスク氏は6兆円をかけてその座を手に入れているのですから。
 マスク氏自身はCEO就任後の実績に自信があっての行動とも受け取れます。さらに大胆な改革を進めるため、民主主義的な投票行動によってその裏付けとなる信任をツィート民に求めているのでしょうか。

 もしくは、スペースX、テスラ、ツィッターと3社を一度に経営するのに疲れた?

 とはいえ、今回のツィートが民主主義にのっとった行動といえるか疑問は残ります。まず、投票を施行する法がないこと。したがって「投票結果に従う」ことに意味がないこと。不特定多数かつ多重投票が可能なデジタルの投票に信ぴょう性がないこと。

 従って彼の行動に真実味はなく、共和政ローマ時代の独裁官やコンスルのような信任を大衆から得たいのか、もしくは16世紀頃の西ヨーロッパで見られた選挙王制を夢見ているのかもしれません。
 投票する人間は誰でもいいわけで、政治に口出しのできない大衆がたくさん集まるのが最適。いったん彼らから信任を受けた後は絶対的権力を手にした専制政治が待っています。筆者は民主的な形を借りた大衆迎合的な劇場型政治の遺物をツィッターで見せられている気分です。

 ツィッターはこれから正しい改革を経て、世論を形作るメディアとして復活するのか。それともマスク氏の6兆円の玩具になってしまうのか。
 マスク氏の破天荒な言動に振り回されつつ、見守っていくしかなさそうです。(水田享介)

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