発生からすでに2年以上が経ったにもかかわらず、いっこうに沈静化しない新型コロナ。日本では11月半ばにきて、第8波のきざしを見せています。
それにも関わらず入国制限が解け、外国からぞくぞくと人がやってきています。テレビでは外国人観光客たちが、日本ではいまだにマスクをしていると不思議がったり笑ったりする姿をおもしろおかしく紹介しています。おおきなお世話です。
まるで新型コロナ感染症などなかったかのように振る舞うのが世界の常識とマスコミは報道していますが、ここにきて感染症による問題が新たな展開を見せ始めました。
それは「ブレインフォグ」。英語表記は「brain fog」。日本語で検索してもわずかしかありませんが、英語検索で「Long Covid、brain fog」とすると、沢山の症例と研究発表が出てきます。
コロナ感染で重症化しなかったにもかかわらず、感染を原因とするさまざまな後遺症に悩む人が多いことがわかります。ネット上にある症例をざっと拾うと以下の症状が顕著です。
【症例】
○物忘れ、名前忘れなど認知症のような症状
○集中力が続かず、業務の処理能率が落ちた
○仕事に復帰した後、同じミスを何度も起こす
○○慣れているはずの仕事の手順を間違える。それを指摘されるまで誤りに気付かない
○数字が覚えられない。時計が読めなくなる
○今が西暦何年か、何月か、何時かわからなくなる
○会話の最中に言葉に詰まって、無言になる
○通勤を再開しても、どの駅で乗り換えるのか忘れている
治癒したはずが、日常生活のちょっとしたことにつまずき、基本的な行動に支障をきたしている方が、一定数いるようです。
そして、病院では後遺症とは受け取ってもらえず、軽微なケアレスミス、加齢から来るボケとして片付けられているようです。
新型コロナ後遺症「ブレーンフォグ」記憶力や集中力低下
...文字通り頭の中に霧がかかったような状態で、集中力や記憶力の低下といった症状がみられる。現時点で治療法は確立されておらず対症療法しかないという。
(産経新聞 2022年8月2日)
この記事によると後遺症対策の展望は明るくありません。
今後の見通しについては、
「オミクロン株は重症化しにくいが、後遺症が出ることは十分考えられる。ブレーンフォグ患者の絶対数がこれから増えることは間違いない」(桐生大学医療保健学部准教授の川上智史さん)
治療法はないというが、
聖マリアンナ医科大学内科学脳神経内科教授の秋山久尚さんは「ブレーンフォグはいろいろな症状を含んでいるため、一つ一つに対処するしかない」と説明する。
(産経新聞 同上記事)
専門医が解決策がないという後遺症に、このコラムで何か役に立つことが書けるわけはありません。
筆者は新型コロナに感染したことがないので罹患体験はありません。ただ、完治した人と電話で会話しただけですが、その方に明らかな後遺症を感じました。
・電話で会話していると、相手の言葉が止まるときがあった
・かと思うと、急に饒舌になる
・こちらの言葉を理解していないときがあるがわかったふりをしていた
何か上の空状態の人と話している感じでしたが、本人はコロナは治ったと思っているようでした。
ブレインフォグは認知症のようと紹介されていますが、明らかに認知症とは異なった発言や行動なので同列に扱うのは危険です。対面した筆者も初めて見聞きする異常行動のため、例えようがないのがもどかしいです。
認知症のような同じ事を何度も聞き返すわけでも、脳梗塞のようにスッポリと記憶が消えたり運動障害があるわけはありません。
治癒したはずが、何かを忘れている雰囲気で、音楽で例えるなら、カセットテープの途中でふっと音楽が抜けて無音になってまた音楽に戻る感じでしょうか。
意識が途切れ途切れなのに本人は気がついていないようです。この後遺症を放置したままでは、遠からず社会基盤にほころびが生ずるでしょう。
ブレインフォグ。もしくは、ブレーンフォグ。日本のマスコミではまだほとんどニュースに取り上げることのないワードです。いえ、この先も取り上げることなどないかもしれません。しかし、確実に日本社会に広がりつつある後遺症です。
筆者がいま言えることは、マスクをするかしないかをネタにしたテレビや報道を見つけたら、すぐにスイッチを切るかクレームをおすすめします。命に関わる問題を茶化しても、何の解決にもなりません。(水田享介)
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★追加情報
社員をむしばむコロナ後遺症
感染の傷痕「後遺症」に社会と会社で対応せよ
新型コロナウイルス感染からの回復後も、後遺症に苦しむ人がじわりと増えている。微熱や倦怠(けんたい)感が数カ月続き、職場での生産性を損ねる事例もあるようだ。後遺症に悩む社員を支えるため、企業にも対策が必要だと有識者は警鐘を鳴らす
(日経ビジネス/日経ビジネス編集委員・田村 賢司 2022年11月11日)
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/01277/