アマゾンは近いうちに、日本の医薬品販売に進出する可能性が判明しました。
Amazon、処方薬ネット販売に参入 中小薬局と患者仲介
米アマゾン・ドット・コムが日本で処方薬販売への参入を検討していることが分かった。中小薬局と組み、患者がオンラインで服薬指導を受ける新たなプラットフォームをつくる方向だ。利用者は薬局に立ち寄らずに薬の配送までネットで完結できる。
(日本経済新聞 2022年9月5日掲出)
このことは、先日の当コラムでお知らせした通り、GAFAがヘルスケア部門を新たな収益源と見込み、世界中で医薬品業界にその手を伸ばしていることの一環とみるべきでしょう。
[717]革命か独占か、GAFAが狙うヘルスケア分野
オンライン薬局 PillPack を買収(2018年)した米アマゾンは、処方箋薬の通販をスタート。家庭医療のもっとも近い場所にいるといえます。
(2022年08月05日のコラムより)
日本で予想される事業形態は次の通り。
1)医師から診察を受けた患者は電子方箋を受け取る。
2)患者はアマゾンにアクセスし、表示された薬局に電子処方箋を送信。
3)薬局は電子処方箋に従い薬を調剤する。
4)薬局は必要に応じオンラインで患者に服薬のアドバイスをする。
5)アマゾンの配達ネットワークで薬を患者に届ける。
このシステムが実現すると、薬局経営に一大変革をもたらすことになりそうです。
まず、薬局は病院の周辺に店舗を置いておく必要がなくなります。アマゾンに登録しておけば、店舗を持つ必要すらありません。病院帰りの患者だけを相手にした対面販売から、全国の患者を顧客に取り込める可能性も出てきました。
患者側からすると薬局はどこも同じに見えたこれまでから、アマゾンサイトに表示される薬局のやる気、経営方針などのアピールポイントを見ることになります。コメントや星の数で薬局ごとの評価がわかれば、患者は数多くの薬局の中からお気に入りの販売店をチョイスできるでしょう。
服用アドバイスの品質を上げることが患者獲得につながる。薬局にとっても患者にとってもウィンウィンの関係で、いいことずくめですね。
ただ参加する中小の薬局にとっていいことばかりでしょうか。アメリカではアマゾンはオンライン薬局を持ち、アマゾン自身が薬を販売しています。アマゾンの一人勝ちです。その販売システムとノウハウが、いずれ日本でも展開されることにならないでしょうか。
患者にとっても通院履歴や病歴など、個人情報がアマゾンに蓄積されることは覚悟しておいた方が良いでしょう。
サイトを開くと、おすすめの書籍やヘルスケア製品、健康食品がずらりと並び、「あなたの健康のため」に強くリコメンドされる日がやってくるかもしれません。
いずれ日にか、あなたがチョコをつまんだ瞬間に、あのボイスナビゲーターが、激しい叱責のことばを投げかけても、怒り返してはいけません。彼(彼女)はあなたの健康を気遣う主治医になったのですから。
日本では、来年2023年より電子処方箋の運用が始まります。その時にアマゾンがどのようなサービスを展開するのか、片時も目が離せません。(水田享介)