みなさんはさかなクンをご存じでしょうか。
魚の話をさせると泉のごとく知識があふれだし話が止まらなくなるタレントさん?言葉の端々に「ギョギョッ」を押し込んでくる癖の強い、ふぐの帽子がトレードマークのあのお方。
テレビ初登場はやたらと魚に詳しい高校生でした。その後、魚専門のイラストレーターとして活動。近年は白衣を着てのテレビ出演が多く、いつの間にか大学の名誉博士の肩書きまで取得しています。
ギョ(魚)人生を着実にステップアップしていませんか、さかなクン。
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Yahoo!ニュースサイトに、さかなクンがこれまでの人生を語る記事が出ています。
自分は普通にしているつもりなんですけど──さかなクンの、「奇跡すギョい多い」人生
観察し、描き、そしておいしく食べる。魚のスペシャリストとして国民的人気を誇る"さかなクン"。静かで目立たず、勉強も運動も苦手な子どもだったというが、エリートコースとは異なる側道を、自力で開いて歩んできた。「気がついたら、ここにいました。夢のようです」。
(Yahoo!ニュース オリジナル 特集/取材・文:山野井春絵 2022年8月27日)
魚の専門知識がスラスラと出てくるのに学校の勉強は苦手とは意外でした。2016年に出版した自叙伝ではひたすら「好きな魚の道」を歩いて、今日まで来たことがわかります。
さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!~
著:さかなクン/講談社刊
大好きなことを見つけて、夢中になることの強さ、尊さ、輝きが詰まった、さかなクンの初の自叙伝。家族やまわりの人に温かく見守られ、応援されて「好き!」をつらぬきとおせたさかなクン。
入学はかなわなかった東京海洋大学で、名誉博士・客員教授を務めるまでになりました。ただの魚好きだけでは到底望めない地位にどうやってたどりついたのでしょう。
さかなクンがただのタレントではなく、学者としての実力を示すエピソードがあります。
2010年、絶滅して70年も経つ幻の魚、クニマスのイラスト制作に当たり、監修の大学教授から忠実な色再現を求められたさかなクン。色味の参考にとクニマスに近いヒメマスを取り寄せたところ、それはヒメマスではなく・・・。
中坊京都大学教授の論文にその経緯が詳しく書かれています。
クニマス Oncorhynchus kawamurae
―絶滅から復活,そして今後―
環境省のレッドデータブックに絶滅種として記載されていた魚(クニマス)が生きて姿をあらわしたことが様々な波紋を呼んでいる。・・・
イラストレーターであるさかなクンの本を監修することになり,その一節として,クニマスの体色復元を試みた。・・・彼ら二人は「黒」を婚姻色だとおもい,ヒメマスなら 3 月には産卵しないのでクニマスかもしれないと思ったとのことである。
中坊徹次(京都大学総合博物館)
さかなクンが描くイラスト本の監修を大学教授が引き受ける一節は、さかなクンが魚類のイラストレーターとして高く評価されていることがわかります。
そして、さかなクンは絶滅種のクニマスを描くにあたり、近種の魚をわざわざ取り寄せる熱意を示し、届いた魚体のわずかな違いを敏感に感じ取り、これこそ絶滅種のクニマスと割り出しました。
魚好きや博識を越えた研究者としての目を備えていたさかなクンだからこそ、大学教授もその判断を支持したといえるでしょう。
絶滅種といわれる魚をそれと特定するのは、おそらくしろうとにはできないことです。だれも見たことがない魚種ですから。
さかなクンはテレビには映っても映らなくても、研究者として一貫した活動をしていたことが奇跡の発見につながったといえるでしょう。
そんなさかなクンが映画になりました。公開は2022年9月1日。さかなクン役は、女優の「のん」さん。性別を越えた抜擢です。
「さかなのこ」
その原作はさかなクン初の自伝的エッセイ。主演をつとめるのは、精力的にクリエイティブ活動を続ける、女優・のん。好きなことに一直線で、周囲の人々を幸せにする不思議な魅力にあふれた主人公ミー坊を性別の垣根を越え体現する。
映画「さかなのこ」・公式サイト
https://sakananoko.jp/
現実のさかなクンは別役で登場するとか・・・
「本作では、原作と出演のほか、魚類監修、劇伴でのバスクラリネット演奏など、多岐にわたり参加している。 」
(映画「さかなのこ」・公式サイトより)
ぜひ、映画館に足をお運びください。ギョギョッ。(水田享介)
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さかなクン・オフィシャルサイト
http://www.sakanakun.com/