皆さんは日本国内に古くから伝わる行事のひとつ、「うさぎ狩り」なるものをご存じでしょうか。
筆者がこのうさぎ狩りを知ったのは、歴史小説『翔ぶが如く』(著者:司馬遼太郎)の中で、西郷隆盛が鹿児島に引退した後、犬を連れて山にうさぎ狩りに行くという一節でした。
明治初めのこと、山に行けばかならずうさぎがおり、容易に狩ることができたのだな、と気にもとめていませんでした。
ところが、熊本出身の方が言うには、40年ほど前の小学生時代、学校行事として「うさぎ狩り」があったそうです。
熊本市内の学校では、うさぎ狩りの一ヶ月ほど前から、男子だけを集めてうさぎを大声で追い込む者、網を持って待ち構える者などの班に分かれて徹底的に体をいじめ抜く練習が続くそうです。
そして、当日は夜も明けきらぬうちから学校に集合。暗い中、大太鼓の合図で野山を駆け回ること半日。
お昼前に終了すると、給食にはウサギ肉を炊き込んだごはんを食べて終了。うさぎが捕れても捕れなくても、その炊き込みごはんは定番の振る舞い料理だったとか。
男子だけとはいえ、大勢の小学生に行き渡るほどうさぎが捕れたのでしょうか。
聞いた限りでは謎の肉にしか思えませんが、食べている当人たちはうさぎの肉と信じていたそうです。
「うさぎ狩り 熊本」で検索したところ、熊本県内の小学校では、いまも伝統行事として続いている様子です。
さて、先日、熊本の某銀行に勤める甥が我が家にやってきました。うさぎ狩りの話を持ち出したところ、驚きの展開が待っていました。
甥:「自分はやったことはなく、今はもうないけれど、年輩の先輩の(昭和)時代は社内行事としてやっていたと聞いたことがあります。」
やはり「うさぎ狩り」の伝統は熊本に定着していたようです。もしかして、西郷さんの出身地、鹿児島の学校や企業であれば、本物のうさぎを狩る行事として今も健在かもしれません。
岩手県でも百年以上続く伝統行事として高校で行われています。
遠野高校「うさぎ狩り」
遠野高校の伝統行事「うさぎ狩り」が、きょう上郷町のわらび峠で実施されました。うさぎ狩りは100年ほど前から行われている遠野高校の伝統行事で、当初は、農作物を荒らすうさぎを駆除することを目的としていました。
(遠野テレビ 2019年10月9日放送)
また、長野県では広く普及していたようです。
北信濃の「兎狩り」「兎追い」について、毎年いつごろ、どのような形で行われていたか。
(県立長野図書館・レファレンス事例詳細 2021年06月13日)
【結論】
うさぎ狩りはうさぎがいようがいまいが必ずやる。伝統行事だから。
いまはやりのVR(仮想現実)ゲームを先取りした、バーチャルうさぎ狩り、ですね。
みなさんの地域には、古式ゆかしい謎の伝統行事はいくつ残っているでしょうか。(水田享介)