岸本泰士郎慶應義塾大学特任教授(医学部ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座)らと株式会社 FRONTEO は、3分から5分程度の会話から、九割近い精度で認知症を判別するシステムを開発しました。来年、2023年にも実用化する計画です。
会話通じてAIが認知症診断、精度は9割...慶応大などのチームが開発
認知症の疑いがあるかについて、人工知能(AI)が医師らとの会話内容や言葉遣いから判定するシステムを、慶応大などのチームが開発したと発表した。約9割の精度で判別できるといい、・・・。
(読売新聞オンライン 2022年8月20日掲出)
慶応大学医学部のプレスリリースによると、AIプログラムが簡単な会話を解析して、高い精度で認知症の診断が行えるそうです。
会話型 認知症診断支援 AI プログラムの開発
(中略)認知症は記憶力や注意力など、さまざまな機能に影響を与えますが、言語機能にも影響が出ることが知られています。そこで我々は自由会話を録音し、自然言語処理(NLP)の技術を使って認知症の可能性を判定する研究を行いました。
(慶応大学医学部/プレスリリース 2022年8月8日発表)
認知症は高齢者だけの問題で、一般社会人には必要ないと思われがちですが、決してそうとはいえません。
近年、増えている高齢ドライバーの交通事故では、不特定多数の歩行者が一番の被害者です。暴走するクルマの前では誰も無傷ではいられません。
ある調査によると、高齢ドライバーの約2割が認知症の疑いがあると出ています。
高齢ドライバーの約2割に、認知機能低下の疑い
(株式会社ADKホールディングス 2020年2月19日掲出)
また信じられないことに、認知症の疑いがでた高齢ドライバーのうち、6割は免許証返納に応じましたが、残り4割は免許を継続している事実が明らかになりました。
「認知症のおそれ」の高齢ドライバー、約4割が免許継続
75歳以上の運転者が対象の認知機能検査で認知症のおそれがあると判定され、昨年中に運転免許の扱いが決まった約3万2千人のうち、約6割が免許の継続を断念・・・。
(朝日新聞アピタル・田内康介 2021年3月29日掲出)
現在おこなわれている免許更新時の認知機能検査は、16枚の絵を記憶して思い出す「手がかり再生」、検査時の日時曜日を答える「時間の見当識」となっています。ところがこの検査法はすでに形骸化していることはご存じでしょうか。
認知機能検査と高齢者講習(75歳以上の方の免許更新)
(警視庁 2022年6月23日更新)
この検査には「手がかり再生攻略法」、「認知機能検査完全解説」など事前学習や記憶学習といったズルい指南法がいくつも出回っているのが現状です。善意の能力検査のはずがただの暗記テスト、すり抜け技能になってしまっているのです。
免許更新に訪れた高齢者に、会話によるAI受診を適用すれば、認知症を隠したドライバーや隠れ認知症をあぶり出し、悲惨な事故を未然に防ぐことができるでしょう。
また、高齢者でなくとも、事故歴や違反歴によっては、年齢を問わず自発的な受診を促すことも考えられます。若年認知症の早期発見はすみやかな治療開始につながります。
世の中にあふれるAI搭載、AI支援、AIプログラム、AIシステム・・・。しかし本当に役に立っているAIはいくつあるのでしょうか。このAI診断システムが早期に実用化されることを願っています。(水田享介)