いよいよ猛暑の8月が始まりました。今週は日本の各地域で35℃越えが続き、万全の暑さ対策が求められます。
西・東日本は今週も猛暑続く 暑さは長期戦に
1日(月)も高気圧に覆われ、西・東日本は晴れる所が多く、猛暑が続く見込み。予想最高気温は、松江と京都で38℃、埼玉県熊谷で37℃、名古屋と金沢で36℃、東京35℃と、体温を超えるような危険な暑さの所も・・・。
(ウェザーマップ/気象予報士・大隅智子 2022年8月1日)
とはいえ、コロナ大流行の渦中にある今、マスクの着用や窓開け換気にも気を遣わねばならず、これまでにない複雑な対応に頭の痛いところです。
そうした中、都市部の暑さ対策のひとつに小池都知事が呼びかけた「打ち水作戦」があったことはまだ記憶に新しいでしょう。
小池都知事、東京五輪へ向け「打ち水」協力呼び掛け
小池百合子都知事は23日、東京・日比谷ミッドタウンで行われた打ち水イベントに参加し、20年東京オリンピック(五輪)・パラリンピックに向けた暑さ対策の一環として、江戸由来の「打ち水作戦」を活用する意向を示した。
(日刊スポーツ 2018年7月24日掲出)
打ち水をすれば、東京などの都市部でも暑さが和らぐと主張するイベントで、NPO法人の音頭取りで、20年ほど前から夏場には毎年実施されてきたようです。
「打ち水大作戦2022」
涼を呼び込む昔ながらの知恵である打ち水。
みんなでいっせいに水をまいたら真夏の気温が下がるという仮説を検証するための社会実験として2003年にスタートした打ち水大作戦。
毎日おうちで打ち水をしたり、密を避けて打ち水イベントに参加したり、夏は打ち水で涼しくすごしましょう。
(打ち水大作戦本部)
しかし、「水を差すようですが」、その効果はいかほどなのでしょうか。
いまでは最高気温の常連となった岐阜県多治見市では、2007年から散水車で打ち水を実施していましたが、「打ち水を打った後は、湯気が立ちこめていっそう暑くなる」との市民の苦情が寄せられて、そうそうに中止したそうです。
筆者は打ち水について科学的な実証実験の記録を探しましたが、いまのところそうした実験は見つかりませんでした。
一説によると、日本の都市部はいまや完全にコンクリートやアスファルトで覆われており、そこに打ち水をしても蒸散による冷却効果は望めないと言われています。水が地面にしみこむことがないからです。
洪水対策が行き届いた今、都市部の雨水や河川の水は地面に浸透することなく、一気に海に放出されています。恵まれた降水量の大部分は、使い道のない下水として処理されている現状がある一方、わずかな打ち水で自然環境を改善できるはずがありません。
打ち水は「江戸由来、江戸の知恵」と持ち上げたところで、ただのノスタルジーに過ぎません。コンクリートで固めた今の東京は、それを受け入れる環境ではありません。
ある程度年齢を重ねた方なら、子どもの頃に体験した夕立が昼間の暑さを忘れさせてくれた経験があるでしょう。
筆者も十代の頃、九州や東京・多摩地域でそうした恵みのひと雨を経験しています。いまはどうでしょう。
子どもの頃に見た空にそびえ立つ入道雲も、もう長いこと見ていません。天気予報で夕立の言葉を聞かなくなり、聞こえてくるのは豪雨、線状降水帯という恐ろしいフレーズばかり。
全国の各都市、自治体で行われる今年の打ち水大作戦。その精神を活かして、現代にあった新たな暑さ対策をさぐっていただくことを願っています。(水田享介)