いまでは当然のように描かれている植物や動物、風景などの自然描写。見たものをその通りに描くデッサンや素描は絵画の基本です。しかしこのことは、必ずしもその時々の人に受け入れられたわけではありませんでした。
日本の絵画は古来から、中国の影響を受けつつもさまざまな流派が生まれ、貴族社会から武家社会を彩ってきました。そこでは絵画表現には決まり事があり、そのルールの中で描くことを求められていました。室町時代から江戸時代末まで武家に重用された「狩野派」は、絵画技法の統一で隆盛を極めましたが、同時に類型的、形式的な堅苦しい絵画が主流となりました。
江戸時代中期に活躍した画家・円山応挙は、写生に徹し、現実にある姿そのままを描き出す「写生画」の技法を極め、「円山派」を確立します。それまで伝統にとらわれ装飾的絵画に終始し、南画・大和絵が中心であった京都画壇に革命を引き起こしたのです。
※重要文化財「写生図巻(甲巻)」(部分)
[円山応挙、明和8年~安永元年(1771~72)、株式会社 千總蔵、東京展:後期展示、京都展:半期展示]
円山派は円山・四条派へと発展し、京都画壇の主流となります。その後いくつもの流派を生み出して、江戸から明治、大正、昭和へと、近世から近代まで脈々と引き継がれていくこととなります。
「円山応挙から近代京都画壇へ」展
【概要】
18世紀、様々な流派が百花繚乱のごとく咲き乱れる京都で、円山応挙は写生画で一世を風靡し円山派を確立しました。また、与謝蕪村に学び応挙にも師事した呉春によって四条派が興り、写生画に瀟洒な情趣を加味して新たな一派が誕生します。
この二派は円山・四条派としてその後の京都の主流となり、近代にいたるまで京都画壇に大きな影響を及ぼしました。
本展は、応挙、呉春を起点として、長沢芦雪、渡辺南岳、岸駒、岸竹堂、幸野楳嶺、塩川文麟、森徹山、菊池芳文、竹内栖鳳、山元春挙、上村松園ら近世から近代へと引き継がれた画家たちの系譜を、一挙にたどります。
また、自然、人物、動物といったテーマを設定することによって、その表現の特徴を丁寧に追います。日本美術史のなかで重要な位置を占める円山・四条派の系譜が、いかに近代日本画へと継承されたのか。
これまでにない最大規模でその全貌に迫る、圧巻の展覧会です。
(「円山応挙から近代京都画壇へ」展公式サイトより)
※公式サイト トップページ
■東京展
【会期】
2019年8月3日(土)~9月29日(日)
前期:2019年8月3日(土)~9月1日(日)
後期:2019年9月3日(火)~9月29日(日)
※前期・後期で大展示替え(ただし大乗寺襖絵は通期展示)
午前10時~午後5時(入館は閉館の30分前まで)
【休館日】
月曜日
※ただし、月曜日が祝日または振替休日の場合は開館、翌日休館
【会場】
東京藝術大学大学美術館 本館 展示室1、2、3、4
【観覧料】
一般1,500円(1,200円) 高校・大学生1,000円(700円) (中学生以下は無料)
※( )は20名以上の団体料金
※団体観覧者20名につき1名の引率者は無料
※障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料
【問い合わせ】
03-5777-8600(ハローダイヤル)
【お得なチケット情報】
・グッズセット券
・前売券
※詳細は公式サイトでご確認ください。
https://okyokindai2019.exhibit.jp/
(※京都展は、2019年11月2日(土)~12月15日(日)、京都国立近代美術館[岡崎公園内]にて開催)
本展のみどころは以下の通り。
●応挙から、呉春、竹内栖鳳、上村松園まで、江戸から昭和までの
円山・四条派が一堂に会します。
●円山応挙の最高傑作
「大乗寺襖絵」を東京では約10年ぶり(京都では約24年ぶり)に特別展示
※重要文化財「松に孔雀図」(全16面のうち4面)
[円山応挙、寛政7年(1795)、兵庫・大乗寺蔵、東京展のみ・通期展示]
●東西合わせて重要文化財12件を含む、約120件の名品を一挙紹介
円山応挙といえば、子犬の愛らしい表情をとらえた絵画もよく知られています。
※「狗子図」
[円山応挙、安永7年(1778)、敦賀市立博物館蔵、東京展:後期展示、京都展:半期展示]
応挙から上村松園までをまとめて鑑賞できる機会はなかなかありません。ぜひとも、足をお運びください。(水田享介)
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■関連リンク
「円山応挙から近代京都画壇へ」展(公式サイト)
https://okyokindai2019.exhibit.jp/
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