令和時代が始まった五月以降、幼い命が奪われる交通事故が立て続けに発生しました。
事故の発生原因の多くは、高齢者ドライバーによる運転ミスや交通法規を守らない安易な運転によるものでした。
自身の体に不調がありながら、その通院にクルマを使っていた高齢者がいました。その一方で、運転能力も反射神経も衰えていない壮年のドライバーも事故を起こしています。多発する交通事故には深い理由があるようです。
茨城ダッシュ、名古屋走り、伊予の早曲がり......
危ない「ローカル交通ルール」、現地教習所に聞いた (1/2)
自動車の暴走や交差点での事故が大きく報じられているが、運転のマナーや習慣をめぐり、地域独自の「ローカルルール」が存在する。当然ながら本来の交通ルール通りに教えている地元の自動車教習所も頭を悩ませるが、解決策はあるのか。
(ITmedia NEWS 2019年05月21日掲出)
地域に特有の交通違反、交通マナーの崩壊、そしてローカルルールなるものが存在していることが明らかになってきました。
その多くは交通法規から外れた違反行為ですから、本当はやってはいけないのですが、この地域の習慣なのでしかたがないとドライバーの間では容認されていたとは驚くばかりです。
先日、北関東に取材に訪れた際、4車線の交差点で異常な光景を目撃しました。直進は赤信号に変わり右折の矢印が点灯したので、右折待ちのクルマが次々に右折を始めました。そのとき、一台の直進車がクラクションを鳴らしながら猛スピードで交差点に進入してきました。
そのクルマは右折車に急ブレーキを踏ませ、右折車をかわしながら走り去ったのでした。
このドライバーは、一体何のために、右折車との衝突も辞さない覚悟で交差点を駆け抜けていったのでしょう。
というのも、百メートルもない次の交差点で、そのクルマは赤信号につかまり停車したからです。
交通違反をしてまで急いだ所で、稼げる時間はたかがしれています。いえ、このクルマのように無意味でしかありません。
もう一つ多いのが、ブレーキを踏まないドライバーの存在です。ハンドルをこねくり回して、衝突を避ける努力はしていても、自分は絶対にブレーキを踏むことがありません。それどころか、加速して衝突を回避しようとさえします。
これでは衝突時の運動エネルギーはさらに大きくなりますから、バンパーがへこむ程度で済むはずが、さらに大きな事故につながります。
こうした事例も、筆者は自宅近くの直線道路で目撃しています。4車線道路で横断する自転車を避けようと、急ハンドルを切った軽自動車がガードレールをなぎ倒しフロントを大破してようやく停止しました。
見通しの良い直線道路ですから、遠くから自転車は見えていたはずです。ブレーキさえ踏めばなんでもないのに、なぜハンドルを切ってガードレールにノーブレーキで突っ込むのか。
危険を回避する際に、まったく理解できない行動をとるドライバーが増えているような気がします。
クルマはその機動性とスピードで、時間を節約してくれます。しかし、ひとたび事故の加害者になると話は別です。多くの謝罪と賠償に自分の時間も財産も失われます。
被害者の傷が癒え損失が贖われるまで、交通事故の加害者はその責任を問われ続けるのです。このコラムが、クルマを走らせる責任の重さを、自覚しなおすきっかけとなることを祈って止みません。(水田享介)