筆者が常日頃、その動向をウォッチしている方のなかに、ニトリの創業者にして現会長の似鳥昭雄氏がいます。
似鳥会長を知るきっかけとなったのは2015年春、たまたま目にした「私の履歴書」(日本経済新聞社)です。そのまっ正直がゆえの破天荒ぶりを、筆者は驚きと共に当コラムで紹介しました。
[033]日経新聞連載中「私の履歴書」ニトリ社長の規格外人生
ニトリ社長の青春が無鉄砲きわまりない。
日本経済新聞の文化欄に「私の履歴書」という長寿コーナーがあります。2015年4月14日現在、連載しているのはニトリ創業者である似鳥社長。10回ほどかけてご自身の生い立ちからニトリ創業までを語ったところですが、予想外のできごとだらけで、目が離せません。
まず、いきなりのハードパンチ。小学生の頃、自分の苗字の「似鳥」を漢字で書けなかった。まさかと思うが当時の恩師もそう証言しているので、ウソではなさそう。ご本人はそんなこともあったな程度に軽く語っていますが、大丈夫なのかこの人は。
(『「できる!」ビジネスマンの雑学』 2015年04月14日)
[055]ただ面白いだけではなかった似鳥社長
(『「できる!」ビジネスマンの雑学』 2015年05月21日)
そんな似鳥氏を取材した最新のインタビュー記事がつい先日、ネットに登場しました。
ニトリが不況を経るにつれ成長した理由、似鳥昭雄会長に聞く
平成の30年間、バブル崩壊以降の日本経済はデフレ不況のトンネルを抜け出せない時期が長く続いた。その荒波をものともせず、32年連続増収増益と右肩上がりの成長を遂げたのが、家具やインテリア雑貨を手がけるニトリホールディングスだ。
同社を率いる似鳥昭雄会長(75)は"経済予測の達人"として財界に名を轟かせている。彼は混迷深まる経済、激動する企業環境の下、時代を読む力や競争を勝ち抜いていく慧眼をどう身につけたのか。さらに新しい元号を迎えた日本経済はこれからどう進んでいくのか―─詳しく訊いた。(聞き手/河野圭祐)
(NEWSポストセブン/週刊ポスト2019年5月17・24日号 2019年5月12日掲出)
不況の時こそ経営者のチエや手腕の見せ所という似鳥氏。不況になると俄然やる気が出てくるという語り口から、決してウソではなさそうです。
たしかに好景気の時は、部下から上がってくる案件のすべてにイエスと答えておく「イケイケドンドン」型経営で十分でしょう。こんな時は経営判断に多少のミスがあってもすぐに取り返しが付きますから、誰が経営しても失敗は少ないものです。
では、不況時における経営のコツとは・・・。大まかに言うと、好景気の時こそ次の不況に備えておくこと。そして、日本経済のちょっと先は、実はアメリカ経済の中に見えている、のだそうです。
先の見えない未来への備えといま見えている未来をつかみ取る力。このふたつを継続することで、不況下でも自社の成長はとどまることはないとういのが似鳥氏の持論です。
実は、似鳥氏が語るひとつひとつはそんなに難しいことではありません。しかし、それを組み合わせて、どこを取捨選択しどのように活かすのか。
それは自分自身が所属する業界や会社、自分のいまのポジションにより、さまざまに変わってくるはずです。
その見極めが難しいから誰もが不景気に右往左往する一方、極意を心得ている似鳥氏は今がチャンスと、その経営手腕を存分に発揮しているのかもしれませんね。(水田享介)