「ググる」、「ググれ」とは、Googleで検索することを動詞化した日本語です。
いつの頃からでしょうか。私たちはわからないことや調べ物があったとき、人にたずねたり辞書を引いたり、さらには図書館や本屋さんに行くことをしなくなったようです。その代わりに使い始めたのが、Yahoo!やGoogleといった検索サイトです。
「Google先生にたずねる(ネットの検索サービスを使う)」と、たちどころに答えが出てくる、無料であるということが普及した原因です。大人のあやふやな答えよりも「最短で最適の答え」が得られると小学生にもわかってしまったということもあるかもしれません。
ところがこのたび、そのGoogle先生がその名誉ある地位を捨て去りました。しかもGoogle社の方針変更によって。
10年前のサイトはGoogle検索に表示されない
「場」としてのインターネットは、絶えず拡大しています。毎日、新しいウェブページが次々につくられています。その数があまりにも多いので、その一部は時とともに消えていっているような気がします。
でも実のところ、それらはGoogleから消えているだけなのかもしれません。
10年前のサイトはGoogleに表示されなくなった?
ウェブデベロッパー/ブロガーのTim Bray氏やMarco Fioretti氏が2018年に投稿した記事によれば、どうやらGoogleはインターネット全体をインデックスするのをやめ、そのせいで一部の古いサイト(10年よりも前のもの)はGoogle検索に表示されなくなったようなのです。
(lifehacker 2019年4月30日掲出)
世の中のあらゆる事とつながっていたはずのインターネットですが、そのつながりを決めるインデックス作業が膨大になったから、10年以上昔の情報は対象外にするとGoogleが決めたようです。一企業の社内事情のため、仕方のないことでしょう。
結局のところ、インターネットが万能だったわけではなく、私たちはGoogleが作ったインデックス(情報のヒモ付け)のリンクをたどっていたことが露呈しました。
11年前の記事でも、すでに検索結果がGoogle次第で変えられることも明らかになっています。
2001年のインターネットにタイムスリップ Google検索でGo!
2001年のWebの世界にタイムスリップ――米Googleが創立10周年記念企画として、2001年1月当時のGoogle検索ページと、当時の検索結果のキャッシュを公開している。13億2692万のインデックスから検索できると表示されており、7年前の検索結果を体験できる。
(ITmediaNEWS 2008年10月02日掲出)
この興味深い記事も11年前のものですから、今後は検索で見つけることは難しくなるかもしれません。
検索対象を限定する今回の処置は企業の都合にすぎませんが、検索の恩恵を受けてきたネット利用者にとっては一大事です。
ネット社会から10年以上前の出来事、情報、歴史が消えてなくなるようなものです。特に影響が大きいのが、ニュースソースをネット検索に頼っている場合です。
事故や事件を振り返ったり、類似の事例を探そうにも、その対象が10年と割り切られてしまうと、すべてが刹那的にしかなりません。
これからのインターネット社会は、過去10年間だけの限定社会に取って代わっていくのでしょうか。
はたしてこのようなネット社会の到来を私たちは望んでいたのでしょうか。
インターネット社会と言えるようになって、たかだか20年ちょっと。今後はその全貌すら振り返ることができなくなりそうです。
ネットだけに頼る社会のもろさや頼りなさが浮き彫りになったニュースでした。(水田享介)