東京都美術館(東京・上野)では、19世紀末ウィーンを代表する画家、グスタフ・クリムトの没後100年を記念する「クリムト展 ウィーンと日本 1900」を開催しています。会期は2019年4月23日(火)~7月10日(水)まで。
※会場入り口
この展覧会では、初期の工芸美術学校時代の習作や仲間たちとの共作に始まり、劇場の注文など伝統的装飾で腕を磨いた修業時代、独自のアート表現を開花させた画家時代と、クリムトの全時代を網羅した過去最大級の規模となっています。
なかでも1883年から「芸術家カンパニー」を共同経営した同級生のフランツ・マッチュ、弟のエルンストの作品もあわせて展示することで、互いに影響しあった過程をつぶさに見て取ることができます。
クリムトが使っていた「赤いスケッチブック」は、今に残る作品の素描集ですが、重要な作品を同時進行で構築していたことをうかがわせる貴重な記録となっています。
※「グスタフ・クリムト 赤いスケッチブック」(1898年・ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館)
クリムトの作品にみられる平面的描写や金や銀を使った装飾的な背景描写は、日本画や浮世絵、日本の工芸品の影響と言われています。実際にクリムトは数多くの日本画、浮世絵を収集しており、クリムト所有の「鐙(あぶみ)」が展示してありました。
※「女の三世代」(1905年・ローマ国立近代美術館)
※「鐙(あぶみ)」(レオポルド美術館)
クリムトは鐙のどこに日本的な美を感じたのか。どんなインスピレーションを感じたのか。いまとなっては謎のままです。
展示室ひとつをそのまま使った、巨大な復元壁画は圧倒的な存在感で、見る人に迫ってきます。
※「ヨーゼフ・ホフマンによる扉飾りレリーフの復元」(2011年・ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館)
ウィーンに花開いたアートをそのまま運んできたような展示内容は、19世紀末ヨーロッパの空気感を感じ取ることができました。
クリムトの生きた時代に想像を馳せることで、クリムトが目指した美の世界をより深く知ることができた展覧会となっています。(水田享介)
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■関連リンク
【公式】「クリムト展 ウィーンと日本 1900」
https://klimt2019.jp