旅に持っていく本をお探しの方に最適の一冊をご紹介します。
「辺境中毒!」(高野秀行/集英社文庫)
すでに「高野中毒」に冒された方には最適の書。まだ高野をご存じない方にも最適の入門書となっています。
※書籍の表紙
その前に、そもそも「高野秀行」とは何者かという疑問に答える必要がありそうです。
高野氏は、UMA(未確認動物)を見つけ出すことに作家生命をかけた冒険家であり、「エンタメ・ノンフィクション」分野を開拓した作家であり、そしてUMAおよび「エンタメ・ノンフィクション」評論家、と筆者は理解しています。
UMAに関する書籍は、10冊近く発表しているはずですが、いまだに一頭、一体、一匹、ひとつまみも発見に至っていません。それなのになぜこうもUMA本が書けるのか。そう思うといかがわしい人物のようですが、たしかにいかがわしさ満載の本になっています。
それよりも筆者がおすすめしたいのは、評論家としての高野秀行です。
この「辺境中毒!」の後半は、書評になっています。書評自体は15年ほど前のものです。しかし、まったく古くささがありません。なぜかというと、15年前の執筆当時、さほど知られていなかった書き手ながら、将来性のある若手を次々と評論しており、その諸氏は今では「ひとくせある名著」を持つ作家となっているのです。
また、旅に持参する本について、高野氏の適確なアドバイスが光ります。
この本一冊を読めば、どんな本を旅に持参すれば良いかの判断力がつきます。また、旅の友にふさわしい古今の名著がよりどりみどり紹介されています。
旅先でのちょっとした待ち時間に、また観光地でリラックスした時間に読むに良し、船や航空機などの長い待ち時間や移動時間に読むも良し。
「辺境中毒!」であなたの旅にふさわしい一冊を見つけてみてはいかが。(水田享介)